適材適所という言葉がある。その重要性を実感したので、当社(ちばぎん総合研究所)での経験を述べてみたい。当社は千葉銀行の関連会社で、社員は約45名。パートを除く社員は千葉銀行からの出向者である。本人希望あるいは人材育成的見地に基づく出向者もいるが、銀行本体では十分に力を発揮できなかった出向者も少なくない。具体的には、体調不十分、上司とソリが合わない、営業が苦手といった人々である。
しかしそういう人々の中にも、2〜3年でめきめき力をつけて収益に大きく貢献する社員がいる。平成2年の設立当初は素人集団から出発した当社だが、力をつけた人々が少しずつ増え定着することによって収益力を高めてきた。当社の場合、かつては本体から人件費の補填を受けていたが、2年前からはその支援なしでも会社の経営が回るようになってきたのである。もちろん今でも本体からの支援は、直接・間接少なくない。それでも収益基盤が格段に強化されたのは、このような人材の成長に依存している。つまりそれまで今1つ力を発揮できなかった人々が、当社の収益を支えているのである。
当社の収益はコンサルティングと受託調査から構成されている。いずれもチームワークで仕事を進めるというよりは、1人1人が独立して対応する。効率よく数をこなすというよりは、分析、提言、説得で個別対応を積み重ねる。こうした点で銀行の業務とは内容が違っているから、本体の仕事に不向きな人でも、新たに所を得て活躍できるのである。
同じような人材活用は、例えば銀行内の調査部としてもできないわけではないだろう。しかし社員の意欲を高め、自己啓発を刺激するためには、独自の評価・昇進基準、一貫した教育、独立の採算管理の続けられることが望まれる。そのための対応は、関連会社という別組織で実施させるほうが効率的だ。当社の人材成長も、そうした本体の理解あってのことだった。
世の中には何でもできる有能な人もいるが、それは少数だ。多くの人々にはそれぞれ得意技がある反面、苦手な仕事がある。苦手な仕事を押し付けるより、得意技を伸ばすほうがグループの力を高めるうえで有効だ。一般に金融機関の関連会社は、OBの受け皿、定型業務のコスト削減といった視点で利用されることが多い。それはそれで重要だが、本体とは別な人材育成・活用のために関連会社を利用する余地はまだありそうに思う。
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適材適所
(本稿は、東京ジャーナル社発行の「財政金融ジャーナル」9月号「ヌカちゃんの窓」に掲載されたものです)
額賀 信[ちばぎん総合研究所取締役社長]
