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房総録
親と子の関係
(本稿は、7月23日付千葉日報「房総録」に掲載されたものです)
額賀 信[ちばぎん総合研究所取締役社長]
最近の社会記事には子供が親を殺す事件が多い。親に対する不満が社会に向けられて殺人事件になることも少なくない。事件を起こす若者たちの多くは、自分は好きでこの世に生まれてきたのではないと思っている。家庭に不満をもつ若者も、親の勝手で生をうけたと怒っていることが多い。
子供たちは確かにみずから選択して生まれてきたわけではない。その通りなのだけれど、生んだ親も、実は多かれ少なかれ間違いだらけの人生で、つらいことが多いのだ。
例えば結婚である。相互に相手をよく知り、理解して結婚することもないではないが、現実には、その逆が多いのだ。相手のことをよく知れば知るほど、欠点が見えて結婚しづらくなる。「あばたもえくぼ」という誤解があって、人は初めて結婚する。だから多くの場合、愛は誤解に基づいて成立し、子供は誤解に基づいて生まれてくる。
親はまた、相手に対し錯覚しているだけではない。自分についてもしばしば誤解している。とびが鷹を生むことはないのだけれど、とびが生まれて初めて、自分が鷹ではないことを悟る親が少なくない。だからといって子供に不満を言うわけにはいかない。大変だけれど、一生懸命働いて子供の学資を稼ぐのだ。
だから親も子も結構苦労しながら生きている。そうした苦労を分かち合っているのが家族である。家族を結び付けているのは、理性の絆ではなくて情念であり、それはしばしば誤解を伴って発生する。けれどもその誤解の結果、私達は時々とてつもない幸せや生きがいを感じることがある。
私たちの親も、そのまた親もそうして生きてきた。子供もそうなるだろう。そう思うと、誤解の結果とはいえ、お互いいとおしい関係だ。私達の多くは理想の家族ではない。しかし苦労を分かち合う大切な関係だ。それを子供もいつかわかると思うがどうだろうか。
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