わたしの意見-
水野 創
復興増税の前提
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」10月6日号に掲載)
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]
政府、民主党の決定した9.2兆円の復興増税案については、朝霞の公務員宿舎の建設がマスコミの話題となったが、基本的に以下の3つの疑問がある。
(1)復興は「新しい国づくり、街づくり、産業づくり」であり、本来、新しい国、街、産業の姿を示した上で、「その実現のためにいくらかかる」という増税の話になるはずだが、その姿が全く見えてこない段階で、増税規模とその内訳だけに焦点が当たっている。
――防災、放射能対策のほか、少子高齢化、過疎、省資源にも対応した新しい国、街、産業の姿、その実現のための制度・法律の整備について早急に示されるべきである。
(2)増税については、既に「社会保障・税の一体改革」(23年7月1日閣議報告)の中で、2015年度の社会保障費増加額を約2.7兆円とした上で、「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」とされている。また、4兆円以上ともされる原発事故の賠償等で今後電力料金の引き上げ等も予想される。復興増税と合わせた負担増全体についての考慮が必要だ。
――欠けている国民の給付・負担の全体像を時期と共に明らかにする努力が求められる。
(3)負担増加の議論の前提として、雇用・所得の増加やデフレの脱却についても「新成長戦略」(22年6月18日閣議報告)の見直しとして示されるべきだが、検討が進んでいない。
――24年度以降、平均で「実質2%、名目3%の成長」を実現し、一刻も早くデフレから脱却するための「新成長戦略」の見直し案を、復興関連事業の効果や円高対応も織り込んだ上で早急に策定するべきだ。
今後の経営戦略、経営計画作成に当たっては、世界経済の動向はもとより、こうした全体像の行方を注視していくことが必要である。
野田政権は、これらについて、結果はもとより検討の過程についても丁寧に説明し、国民の理解を得ながら、国会での合意を得る努力を続けてほしい。
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