Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀はマイナス金利の解除など政策修正を決定

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年3月19日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日(3月19日)、日銀が短期の政策金利について、マイナス金利を解除し概ねゼロ(0~0.1%)で推移するよう促すことを決定。マイナス金利は2016年1月に導入が決定されたため8年振りの解除であり、短期の利上げ(上げ幅は0.1%程度)については07年2月(0.25%から0.5%への利上げ)以来17年振りとなる。

 また、長期金利(10年国債金利)を概ね1%以下に抑制するというYCC(イールド・カーブ・コントロール)を撤廃、ETF(上場投資信託)等の新たな買入れについても停止することとし、今後は短期金利の操作を主たる政策手段とする枠組みに変更。

 ただし、これまでと同額程度の国債買入等により、長期金利の急上昇の回避に努める意向を示した。またETFについては、21年3月に買入れ弾力化を決めたあと殆ど購入していないことから、今回の買入停止による株価への影響は限定的と考えられる。

 これら政策修正の理由として日銀は、2%インフレの持続的・安定的実現が見通せる状況に至ったことを挙げる。先週公表された連合による春闘の結果(第1回回答集計)が+5.28%と1991年(+5.66%)以来の高さとなったことや、中小を含めた企業からの賃上げに関するヒアリング情報などを踏まえ、賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇が続く可能性が高まったと判断した模様だ。

 以上のように日銀は、今回異例な金融緩和策からの転換を図ったが、先行きについては「当面、緩和的な金融環境が継続する」との考えを示した。インフレが2%目標を明確に超えて定着するとは見ていないため、ゆっくりとしたペースで政策修正することが可能で、当面は利上げがあったとしても低金利環境は維持されると考えている模様だ。

 金融市場は、事前の政策修正報道によって織り込んでいたこともあり、本日のところ概ね安定的に推移。どちらかと言えば日銀の情報発信がハト派的と受け止められ、長期金利が低下、株価は上昇、為替は円安方向の動きとなった。

 ただし、緩和的な金融環境が続くのは「現時点の経済物価見通しを前提」ともしており、経済物価の展開次第では利上げのペースが上がる可能性も示唆している。

 企業経営としては、24年中は、基本的に超低金利から低金利にシフトする程度で、経営への影響は大きくないと考えておいてよいだろう。ただし、金利のある世界に戻ることは確実で、25年以降も含めれば金利が相応に引き上げられる可能性も考えられるため、それに向けた備えもしっかり念頭に置いておく必要があろう。

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