Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─「安定しているが緩慢」

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年4月17日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨日、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。主な副題は“Steady but Slow”(安定しているが緩慢)。インフレ鈍化に伴い経済が予想以上に安定してきた一方、現時点では将来の力強い成長は見込めないという考えを示したもの。国や地域による成長のバラツキも指摘している。

 世界経済の成長見通しをみると(表1)、22年の+3.5%から23年+3.2%に幾分鈍化したあと、24年、25年も+3.2%となる見通し。24年は1月見通し対比で+0.1%となり、2回連続の上振れ(10月対比では+0.3%)。大幅な利上げなどにも拘らず、米国が牽引する形で世界経済は予想以上に強靭との見方だ。一方、25年の見通しは据え置かれた。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、22年+8.7%のあと、23年+6.8%、24年+5.9%、25年+4.5%と緩やかに鈍化。1月対比では24年、25年とも新興国中心に+0.1%の上振れ。世界的なインフレは鈍化の方向にあるが、まだ予断は許さないとの判断だ。欧米は利下げ方向に舵を切るとしても、ゆっくりとしたペースとなる可能性が高いことを意味する。

 今回は25年の成長率を24年と変わらない3.2%に据え置いたが、やや長い目でみた成長率は現状程度の3%強にとどまり、2000年以降の平均である3%台半ば強を下回るとの見方を示した。米国は堅調だが、欧州は弱めであり、中国の不動産不況の影響も長引きそうだ。地政学リスクの高まりや近年の貿易制限措置といった反グローバル化の影響も暫く続くとの見立てだろう。中長期の成長率を高めるためには、各国がデジタルインフラや人的資本に投資し、生産性を高めることなどが必要と指摘している。

 世界経済は減速がとまり、日本経済にとって概ね中立の状態となってきたが、当面は明確なプラスに働いていくほどでもないというのがIMF見通しをベースとしたイメージだろう。企業経営としては、世界経済を過度に悲観・楽観することなく、IMFも指摘するようにDX・WX(デジタルおよび人的なトランスフォーメーション)などにより生産性を高めていくことが大事だ。

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