わたしの意見-
水野 創

情勢変化を織り込んだ岸田総理の「新しい資本主義」―2月の雑誌寄稿から5月のロンドン講演へ―

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2022年5月17日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

 岸田総理が訪問先のロンドンで「新しい資本主義」について講演した(5月5日)。文藝春秋2月号への寄稿以降の情勢変化を織り込んだ内容になっている。

 ①ロシアのウクライナ侵略に対応し、「新しい資本主義」が必要な理由を追加。

 ―2月号の格差拡大、温暖化問題など「外部不経済」に、ルールを無視した、不公正な経済活動等によって急激な経済成長を成し遂げた「権威主義的国家からの挑戦」を付加。

 ②昨年末に初めて2,000兆円を超えた家計の金融資産(3月17日発表。資金循環統計)を活用。

 ―「人への投資」として、新たに「資産所得倍増プラン」を掲げる。

 ―「グリーン、デジタル投資」の原資として、家計の金融資産の過半(1,092兆円、54%)を占める現預金と企業の現預金320兆円を、企業がためらっているグリーン、デジタル関連投資に結び付け、中期的な成長戦略の柱とする。

 ―これら資金による市場の活性化で「国際金融センター」としての日本の復活を図る。

 ③2月号では「9.若者世代等の所得引き上げ」の中で唐突に登場した構造問題を、①3本の矢の継続(大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略)、②財政改革、③国際金融センターの復活として結びで整理。

 ④英国での講演であり、2月号では触れていない英国のTPP加盟を強く支持。また、「デジタル田園都市国家構想」の言葉は使わず「地方が直面する少子高齢化や過疎化の解決」としている。

 ただ、対応の具体策は2月号の組み換えが中心で、大きな進展はないと感じられた。講演の最後は7月の参議院選挙に向けた決意表明で結んでいる。今後の政策の具体化に注目したい。

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