わたしの意見-
水野 創

デフレ脱却前の消費税増税―最近の経済見通しの指標から―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」11月29日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 経済見通しの下方修正が相次ぎ、デフレ克服のための金融政策のあり方が焦点のひとつになっている。

 議論を進める前提として、消費税増税の前後の来年度(2013年度)と再来年度(2014年度)を最近の経済見通しがどのような数字で表現しているか確認しておきたい(11月21日発表の日本経済研究センターの見通し)。

 2013年度の実質成長率は世界経済の緩やかな回復や消費税増税前の駆け込みを織り込んでも+1%強の低い伸びにとどまり、2014年度はその反動でマイナス成長。雇用者報酬が3年連続して減少する一方、消費税増税で消費者物価は+2.5%上昇するため個人消費への影響が大きい。鉱工業生産も2012年度大幅減少の後、2013、2014年度も小幅の上昇にとどまる。

 この間、じりじりと円安と長期金利上昇が進行する。

 2014年度までにデフレ脱却が展望できていれば、「消費者物価の上昇」と共に、「売上げ・収益」、「賃金」等も上昇することが期待できたが、それが難しいため、現時点で見通される2014年度の姿は、消費税増税で物価は上がっても賃金は伸びず、長期金利は上昇してしまう姿となっている。

 こうしたショックを軽減するために、新政権は一刻も早く「デフレ脱却」を展望できる成長戦略を実施し、具体的な成果を示す必要がある。政策の選択に当たっては消費者物価だけでなく経済全体がどうなるかを考える必要がある。特に企業にも、住宅ローンを抱える個人にも、財政にも影響の大きい長期金利が急上昇しないよう細心の注意が求められる。「試してみて、駄目ならやり直せばよい」というわけにはいかない。

 いずれにしても、企業経営者はリスクの存在を前提に如何に売上を増やしこの荒波を乗り切っていくかを考えなくてはならない。

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