Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀会合:政策不変も先行き利上げの可能性を示唆か

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2024年5月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は4月26日、金融政策決定会合を開催し、四半期毎に経済・物価見通しを示す展望レポートを公表すると同時に、金融政策の現状維持を決定。

 経済・物価見通しは、今回はじめて26年度見通しを公表(下表)。概要は以下のとおり。

 ①GDP成長率は、前回見通しと比べれば足もとが幾分下振れているものの、26年度にかけて1%前後と、日本経済の実力である潜在成長率(0%台半ば強)を幾分上回る成長を続け、経済の体温がジワジワ上昇していく姿を想定。

 ②消費者物価上昇率は、24年度が原油高や円安から前回対比で幾分上振れており、26年度にかけて2%程度の上昇率が続くとの見通し。

 金融政策については、3月にマイナス金利を解除したばかりであり、事前に再度の利上げを予想する声は殆どなかった。ただし、3月会合以降に進んだ円安の牽制を期待する向きもあっただけに、市場は政策不変や総裁会見の内容をハト派と解釈し、ドル円相場が一時160円をつけるなど円安がさらに進行。

 とくに、記者から「最近の円安進行の金融政策への影響は無視できる範囲内か」といった趣旨の質問を受けた際に、植田総裁が「はい」と答えたことで、市場では金融政策面から円安進行を止める意図がないと解釈され、円安進行の一要因となった可能性がある。

 とは言え、今回の情報発信は必ずしもハト派過ぎるものでもない。物価上昇率は26年度にかけてほぼ2%が定着しそうとの見通しが示されており、植田総裁も「見通しが本当に実現すれば、26年度にかけて政策金利もほぼ『中立金利』の近辺に上昇するとの展望を持っている」旨の発言を行っている。『中立金利』は2%インフレが実現した際に経済・物価に大きな影響を及ぼさない金利水準で、日銀スタッフの推計によれば、「1~2.5%」とされる。

 今後の金融政策運営については、なお不確実性が高いが、円安の影響も加わり持続的な2%インフレの確度が高まるにつれて、政策金利は段階的に引き上げられていくと考えるのが自然だ。まずは、次の利上げ(0.25%)が夏から秋ごろにかけて行われる可能性が高いとみておいた方が良いだろう。

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