Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

石破総理の施政方針演説

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年1月31日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 先週金曜日(1月24日)午後、石破総理の施政方針演説が行われた。通常国会の冒頭で総理が1年間の政策・政治方針を示すものだ。その概要は既に報道され、国会では論戦が始まっているが、興味深いと感じた幾つかのポイントをご紹介したい。

 まず、冒頭に用いた「人材希少社会」、「人財尊重社会」との表現。「人手不足経済」などとの言葉を使いがちであるが、希少な人材を大事にする、財産として尊重することが、社会全体でも企業経営においても非常に大事となっていることを示す表現だ。

 その上で、戦後は「豊かな日本」を目指したが、今後は「楽しい日本」を目指していきたいとした。故・堺屋太一氏が提唱したもので、多様な価値観を持つ一人一人が互いに尊重し合い、自己実現を図っていけるという活力ある国家をイメージしているようだ。

 それを実現するための政策の核心は「地方創生2.0」であり、「令和の日本列島改造」を強力に進めるとした。田中角栄元首相が進めたかつての「日本列島改造」ではハードなインフラの整備が起点であったが、これからは官民が連携して地域の拠点を作り、ハードだけではないソフトの魅力が新たな人の流れを生み出すとした。

 「令和の日本列島改造」の5本の柱は、①若者や女性にも選ばれる地方、②産官学の地方移転と創生、③地方イノベーション創生構想、④新時代のインフラ整備、⑤広域リージョン連携。

 このうち①については、関係人口に着目した「二地域居住」を支援し、地域づくり活動に参加する担い手の「ふるさと住民登録制度」を検討するとしたことが目新しい。千葉県でも南部・東部を中心とした地方部の活性化に繋がる可能性がある。

 ③に関しては、地域活性化や社会課題解決を実現するスタートアップの育成を支援するとしたほか、新たな重点として文化芸術・スポーツ振興により地方創生に繋がる観光産業の活性化を進めるとしたことなどが印象的。

 ④はGX、DXを支えるものだが、脱炭素電源と新たな産業用地の整備をともに促す施策を具体化するとし、電源の近くに産業集積を図るとも読めるメッセージと感じた。千葉県は、洋上風力を含め脱炭素電源が拡大すると予測されるだけに、地域の経済発展に繋がる可能性も考えられる。

 ⑤の広域連携は人口減少社会において非常に大事な取組みだ。ただ、都道府県を超えた連携の前に、千葉県では県内自治体の連携強化がまず重要なことも指摘しておきたい。

 以上のように、千葉県にとっても重要と考えられる内容を含む施政方針であった。これらが今後どう具体化されていくか、注意深くみていきたい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。