Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
日米金融政策ウィーク:FRB利下げ、日銀ETF売却
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年9月22日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
先週は、米国FRBと日銀の会合が相次ぐ「金融政策ウィーク」だった。
FRBは市場予想通り政策金利を0.25%利下げし4~4.25%とした。一方の日銀も、政策金利については予想通り0.5%で据え置いたが、異次元緩和で大幅に積み上げた保有ETF、J-REITについて、今後事務的な詳細を詰めたうえで売却を開始するという決定を行った。
FRBは、今回の利下げに加え、年内さらに1~2回の追加利下げ、来年は1回程度の利下げとなり、来年末の政策金利は3%台前半から半ばに低下するという予想を示した。来年5月にはパウエル議長が任期を迎え、トランプ大統領が利下げ積極派を後任に任命するとみられている。このため、金利が今回のFRB予想よりさらに切り下がる可能性があるが、金利は経済・物価次第であるので、現時点では不透明だ。
日銀については、今回のETF等の売却決定がサプライズであったため、株価は一時的に大きく値を下げたが、売却ペースが極めて緩やかであったことなどを受けて、再び値を戻した。
保有ETFは簿価ベースで37兆円、年間の売却額は0.33兆円であるため、単純計算でETF売却完了に110年強かかる計算。10年経過しても1割も減少しないペースであり、実態は「長期の塩漬け」に近い。中央銀行が極めて長期にわたり株式市場に関与し続けることの是非はさておき、日銀の売却が株価を下押しする効果はほぼ無視できると考えてよいだろう。
日銀の会合でもう一つ注目を集めたのは、9人の政策委員のうち2名が0.25%の利上げを提案したこと。これを受けて市場では10月利上げとの見方がかなり高まったようだ。
ただし、植田総裁は記者会見で、「米国の関税政策の影響などがこれから一段と出てくる可能性があり、景気や物価の下振れリスクも意識しないといけない」と改めて慎重な見方を示した。来春闘もしっかりした賃上げが続くとの確証も得るためには、利上げの判断にはもう少し時間がかかる可能性がある。
日銀の利上げタイミングについては、今後の経済・物価・為替相場次第ではあるが、現時点では年末・年初が中心であり、場合によっては10月の可能性もある、といった程度のイメージを持っておけば良いと思われる。
なお、為替相場については、新総理の経済政策などにも影響を受けるが、金融政策との関係でみると、予想外にFRBの利下げペースや日銀の利上げペースが速まったりするようなことがなければ、基本的には暫く140~150円程度で推移するとの見方を維持しておきたい。
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