Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀:次回の利上げ時期は示さずも12~1月が目安

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年10月31日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は昨日(10/30日)、金融政策決定会合を開催し、四半期毎に経済・物価見通しを示す展望レポートを公表。経済・物価の見通しは7月会合から目立った変化はなく、金融政策は現状維持(政策金利0.5%)を決定。

 展望レポートにおける経済・物価見通しの概要は以下のとおり(下表)。

 ①GDP成長率は、25年度が0.7%と海外経済の動向などを反映し7月対比で+0.1%の上振れ。26、27年度は0.7%、1.0%と不変。

 ②消費者物価上昇率は、25年度が2.7%、26年度1.8%、27年度2.0%と、いずれも不変。

 ③リスクバランスも7月から変化なく、経済は下振れリスクの方が大きいとする一方、物価は概ね上下にバランスと評価。

 会合後の植田総裁の記者会見では、次回の利上げ時期についての言及はなかった。このことが、12月利上げの予想が多かった市場からはハト派と受け止められ、米FRBのパウエル議長による12月利下げへの慎重な発言と併せて、日米金利差の拡大などを囃した円安に繋がっている。

 植田日銀としては、トランプ関税の日米経済への影響、日本の来春闘、高市政権の経済政策などが依然不透明であることも踏まえ、利上げ時期を示唆することは適当でないとの考えだろう。

 ただ、植田総裁からは、利上げ時期が遠くないことを示唆する幾つかの発言もあった。具体的には、①米経済の下方リスクはやや低下した、②春闘については(上昇率を確認するのではなく)初動の情報をもう少し集めたい、③物価目標の実現へ確度が少しずつ高まってきている、などだ。

 利上げに慎重と伝えられる高市政権のスタンスも気にはなるが、利上げが遅れすぎて円安が進むと輸入物価高を通じて国民生活を圧迫するため、強硬に反対する可能性は低いだろう。

 今年の1月には、春闘に関し「しっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている」として、利上げに踏み切った。次回の利上げについても、1月までには実施されるとの公算が高く、今後明らかとなる経済・物価・賃金の情報が堅調であったり、現状以上の円安が続くようであったりすれば、12月に行われる可能性もあるとみておきたい。 

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