わたしの意見-
水野 創

2%目標達成への強いメッセージ―日銀正副総裁候補の衆議院での所信聴取―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」3月7日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 3月4、5日に日銀正副総裁候補の衆議院での所信聴取が行われた。黒田総裁候補はインフレ目標+2%の達成時期について、「2年」の目途を示し、岩田副総裁候補は達成できなければ「辞職」とも言っている。新体制の本気度を示す強いメッセージだ。デフレ脱却に向けた具体的施策と成果が楽しみだ。

 新体制を取り巻く経済は、現状、経済対策・円安・海外景気回復の効果や消費税増税前の駆け込み等から高めの成長・需給バランス改善が期待できる。問題は2年目の2014年度だ。海外経済の動向にもよるが、2013年度の景気対策の一巡、消費税増税前の駆け込み需要の反動から2013年度に比べ成長率は低下し、需給の悪化が見込まれる。政府と共に成長戦略の早期実現や大胆な金融緩和の効果により高揚したマインドを維持し、前向きの投資、消費につなげるリーダーシップを発揮し続けてほしい。

 現在の日銀の2014年のCPI前年比見通しは+0.9%である。より実勢に近いと思われる、民間エコノミストの予測は、本日発表された3月分でも+2.5%と、昨年12月に比べ多少上方修正させているとはいえ消費税増税分+2.0%程度を考慮すると日銀見通しより低く、+2%には距離がある。

 差し当たり、4月の展望レポートでどのように見通しが示され、具体的な政策が取られるかが注目されるが、上記の通り来年以降も展望した対応が重要になる。

 正副総裁の任期は5年である。前半で2%のインフレ目標を達成しデフレ脱却を展望できると、後半は、逆に、それ以上の物価上昇を抑える手綱捌きが求められる。年度平均前年比で示された目標値だけでなく、年度末(2015年3月)の前年比や前月比の動向にも気を配ることになろう。その先には2015年10月の消費税率10%への引上げも迫ってくる。

 挑戦は始まったばかりだ。英知を集めて対応してほしい。

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