わたしの意見-
水野 創

振れる相場―総裁人事、イタリア選挙・経済指標―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2月28日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 この1週間の円相場、株価は「黒田日銀総裁」報道で円安・株高に、イタリアの選挙結果を受けて円高・株安に、短期間に大きく振れた。昨年11月からの上げ幅が大きいだけに、新材料による振れも荒っぽい。巨大な資金が利益を求めて世界中の資産を猛烈な勢いで動き回っている。実需や経済の実勢と方向は違わないとしても振幅はまったく違う。弾き飛ばされないようにしないと大怪我の元だ。

 わが国の「大胆な金融緩和」の内容・成果が明らかになるのは今後だが、米国、欧州危機関連の材料の展開は類型化している。例えば昨年秋から材料にされてきた米国「財政の崖」問題は、ぎりぎりまで議会で対立するが最後に「先送り」も含め妥協が成立している。また欧州も、昨年9月のECB(欧州中央銀行)ドラギ総裁の「無制限国債購入」発言以降、資金繰りについてECBが面倒を見る代わりに各国はやるべきことをしっかりやる流れになっている。

 リーマンショックやギリシャ国債デフォルトの影響の大きさを実際に経験し、その記憶が鮮明な間は、選挙を経てどういう政権になっても破綻や破綻をもたらす金利上昇の引き金は引けまい。その都度、何とか知恵を搾り出すと思う。

 イタリア、ギリシャ、スペインの経済指標を見ると、物価は落ち着いているが所得が落込み国民は厳しく耐乏生活を長期間求められている。失業率も高い。しかし、先行して回復している米国や底を打った中国の効果波及も期待でき、今年は緩やかだが1年遅れの回復が期待できる。各国政権は、国民の「反緊縮」の気分を変え、投資家を安心させる表現力が求められている。

 なお、これらの経済指標はわが国にとっても他人事ではない。最悪シナリオ実現時の経済指標にもなりうるものだからだ。

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