わたしの意見-
水野 創

国民の値上げ許容度を試す大胆な動き―日銀の物価見通しとインフレ期待

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」5月1日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 4月30日で消費税引き上げから1か月、消費税引き上げの影響は想定された範囲内のようだ。高額な自動車などは駆け込み需要後の落ち込みが続いているが、日用品に関しては概ね平常に戻りつつある。

 こうした状況から、日銀が昨日決定した展望レポートでも、物価見通しについて従来の見通しを維持している。

 日銀の見通しは今回も民間エコノミストの予想とは距離があり、「デフレ脱却に向け国民のインフレ期待を高めるために意図的に高めに設定されている」との見方も強い。

 ただ、個人的には、国民のインフレ期待について、4月に入りこれまでとの変化を感じている。

 それは、通常利用しているいくつかのスーパー、ドラッグストアが消費税引き上げを契機に値札を内税表示(総額表示)から外税表示に変えたうえ、外税表示の価格の一部を従来の内税表示価格のままにしている、すなわち税込みでは以前に比べ8%値上げされていることである。どの品物を消費税以上に値上げしているかは店によりさまざまであり、このほか期間限定で全品10%割引といった動きもあるので値上げの全貌はつかみにくいが、どのくらいの値上げまでなら消費者が受け入れるのか試されている気がする。商品によっては最安値の店が変わり、広告、店頭を比較してこれまでとは買う店を変えることも度々だ。

 売り手側でも、「多少のリスクはあっても値上げを試してみよう」という気にさせる空気の変化を感じているのだろう。また、今後、春闘を経て、賃上げがどのくらい中小企業まで浸透するかは、こうした値上げがどの程度受け入れられるかにより決まってくるという面もあると思う。

 こうした動きについて「消費者の反応は厳しく早々に方針転換している」との見方もあるが、店頭価格をみる限り1ヶ月たった今でも基本的には崩れていないというのが実感だ。現時点ではそれなりに受け入れられているということなのだろう。

 これから数か月、店頭価格の動きはもとより、民間エコノミストの予想の変化、所得の伸び、普通預金やこれまでタンス預金になっていた現金の動きなどを含め国民の値上げ許容度とインフレ期待の勝負の行方に注目したい。

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