わたしの意見-
水野 創

2014年GDP統計から2015年を考える―個人消費を中心に

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2月19日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 GDP統計の2014年10~12月期1次速報が発表された(2月16日)。

 実質GDPは季節調整済み前期比+0.6%と3期ぶりのプラスだが、期待比では緩やかな回復にとどまっている。

 今回同時に発表された2014年暦年の計数では消費税引き上げ前後の振れがある程度均され、経済部門別の状況が明確に見える(表)。すなわち、実質GDPは前年比横ばい(0.0%)となったが、寄与度をみると個人消費や公的部門の低下が大きく、設備投資の増加ではカバーしきれていない。この間、純輸出はほぼ均衡まで回復している。

 このうち前年比で減少した個人消費は、名目GDPや物価(デフレーター)の動きと併せてみると以下の通り厳しい環境の下で購買態度も慎重化しているのが分かる。

 ①名目雇用者報酬は増加したが物価の上昇に追いついていない。
 ②家計部門の直面する物価上昇率が他の部門に比べ高く、同部門の厳しさを増している。
 ③名目個人消費の増加は名目雇用者報酬の増加を下回っている(GDPベースの消費性向低下)。

 これらを踏まえ、2015年の個人消費は以下のように展望できる。

 ①企業業績好調の効果が雇用者数、一人当たり賃金増加の形で浸透し名目雇用者報酬は増加を続ける。
 ②物価上昇率は、原油価格低下と前年比で見た消費税引き上げの影響一巡から、4月以降、目立って低下する。
 ③マクロの消費性向は人口高齢化等に伴って従来上昇傾向にあり、上記①、②の状況に資産効果も加われば再び上昇することが期待される。ただし年金、医療などに関する将来への不安が増せば、節約志向が強まることも考えられる。

 好調な企業部門と高水準を続ける公的部門と合わせて2015年がよい年になることは間違いない。追い風が吹いている間に、企業は中長期的課題とリスクに対する基盤強化と前向きの投資に努めることが重要だ。

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