わたしの意見-
水野 創

援軍?強敵?「東京圏高齢化危機回避戦略」

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年6月11日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 6月4日発表の日本創成会議の標記提言は、「東京圏の高齢者、地方移住を。候補地は41地域」といった見出しでマスコミにも大きく報じられた。

 人口の一極集中が進む東京圏で、今後高齢者が急増し医療・介護問題が深刻化することはこれまでから我々も指摘し、様々な試みもなされている(注)。しかし増加する高齢者数は余りに多く、国民全体の危機感の共有も進んでいない。

 今回の提言はこうした現状に対するショック療法であり、昨年の「消滅可能性自治体」同様、強烈な発信力には脱帽する。

 さて、報道では地方移住が強調されているが、提言のポイントは以下の4点である。
 1.医療介護サービスの「人材依存度」を引き下げる構造改革(ICT,ロボットの活用など)
 2.地域医療介護体制の整備と高齢者の集住化の一体的促進
 3.1都3県(+5政令指定都市)の連携・広域対応が不可欠(国も積極的に支援)
 4.東京圏の高齢者の地方移住環境の整備(日本版CCRC構想の推進)

 提言全体は共感できるが、移住については「呼びかける」ものではなく、個々の人が自ら「選択する」ものだと思う。

 千葉県にはこれまでも各地から多くの高齢者が転入している(図)。また、医療・介護分野は重要な発展分野として、現在各地が取り組んでいる地方創生の中でポイントの一つとなっている。各地が将来をかけてそれぞれの特徴を活かしたまちづくりを進めると思う。

 今回候補地とされた41都市はあくまでも現時点で医療介護体制が整っている都市である。

 何れ東京近郊の高齢者が実際に十分な医療・介護を受けられない事態に直面した時に、その時点で、それぞれの人にとって最も安心、安全、快適、便利な場所を求めて移動すると思う。

 そうした場所がどこにもないといった最悪な事態も考えられる。この機会に国全体の取り組みに勢いがつくとよいと思う。

 (注)例えば「安心して暮らせるちばの再構築~ちばの医療・介護の将来に向けて」(千葉経済センター、2013年)では以下を提言。
 1.高齢社会に対応する医療・介護に関する長期ビジョンの策定とその共有化
 2.長期ビジョンを前提とした医療・介護サービスの充実に向けた体制づくり(①人材確保・定着、②地域連携の促進、③健康維持のための仕組みづくり)
 3.千葉県の特性を生かした、健康を中核に据えたまちづくりの推進

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