わたしの意見-
水野 創
上がらなかった4~6月の消費性向
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年8月20日号に掲載)
水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]
4~6月実質GDPは予想通りマイナス成長だった(季節調整済み前期比▲0.4%、17日)。
個人消費もマイナスで(同▲0.8%)、物価上昇を含む名目でもマイナスだった(同▲0.5%)。消費税引き上げの影響一巡後の消費水準という観点から前年同期比(原系列)でみても、実質で駆け込み需要の反動で落ち込んだ前年をやや上回る水準(前年同期比+0.2%、2014年4~6月同▲2.9%)、名目では前年と同水準にとどまった(同+0.0%、2014年4~6月同▲0.3%<消費税引き上げによる物価上昇で実質に比べ落ち込みは小さかった>)。
以下、GW頃まで期待を感じさせた個人消費の勢いが続かなかった背景を確認し、先行きの展望につなげたい。
①ベア・賞与等により名目雇用者報酬は増加しているが、前期比の伸び率は昨年夏までに比べ小幅にとどまり、前年比の伸び率も低下した。
②4月以降の値上げの動きもあり、前期比のデフレーターの上昇率は名目雇用者報酬の伸びを上回り、実質の雇用者報酬はマイナスとなった。
③前年同期比の実質雇用者報酬は2013年10~12月期以来1年半ぶりにプラスに転じたが(前年同期比+0.7%)、上記の足元の伸び悩みと先行きの物価上昇懸念に天候要因も加わり、消費マインド(消費性向)は改善しなかった(季節調整済み、原系列とも)。
このように、4~6月の消費減少は、所得、消費性向双方によるものである。
特に、企業収益や有効求人倍率等雇用の需給に関する指標の改善が、家計部門の物価上昇を上回る所得増加の持続につながっていないのが厳しい。これを企業の側から見ると、採用・賃金・賞与引上げに広がりが見られないことになるが、その主たる原因は、地域、業種、企業規模による業況改善の差が縮小しないことにあるように思う。
7~9月の天候はこれまでのところ消費には追い風であり、最近発表されているお盆期間中の交通機関の利用状況も好調とされている。これらにより、地域、業種、企業規模別の差の縮小が実感され、家計の所得増加にもつながるよう期待したい。
ここで改善していかないと、2017年4月の消費税再引き上げの影響を心配する意見が強まってくると思う。
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