わたしの意見-
水野 創

勢いはないけれど、回復の兆しはある―日次物価指数、売上高指数―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2015年9月25日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 国内経済は年初の期待に反し、回復の勢いが感じられない。

 こうした中、最近の生活関連商品の価格引き上げが個人消費の回復に水をさしていると言われることも多いが、今回は、この指摘が必ずしも当たっていないことを生活最前線であるスーパー関連の指標で確認しておきたい。

 すなわち、スーパーのPOSデータを用いて作成されている東大日次物価指数、日次売上高指数の動きを見ると、昨年、値上げを試みると売上高が落ちたのと異なり、今年は物価指数が上昇する一方で売上高指数も前年比プラスを維持している。値上げは受け入れられているように見える。

 その背景は以下のように考えられる。

 ①日次物価指数は消費税抜きなので、消費者から見た税込の物価は2014年4月から1年間日次物価指数より前年比で+2%ポイント高く、企業が値上げに挑んだ4月には+2.1%に達したほか、年度を通じ+1.5%程度の上昇となった。

 ②これに対し、雇用と賃金の伸びを合わせた消費者の所得の伸びは、増加はしたものの税込の物価上昇には夏季賞与時を除き追い付いていない。売上高指数は年度を通じ減少した。

 ③2015年4月以降、企業が再度、値上げに挑戦し日次物価指数は上昇しているが、消費税引き上げ影響が一巡しているため、消費者の実感する税込み価格は2014年度中に比べ低下し、所得との関係も逆転している。売上高指数も増加に転じている。

 今後も物価の上昇が所得の上昇の範囲内に収まっていれば、業種・企業規模による回復の差が縮小し、価格引き上げ⇒企業収益改善⇒設備投資・賃金・雇用増加(⇒消費増加)という好循環につながると思う。

 期待ほどの勢いはないので時間はかかるだろうが、この間に過度に悲観に振れ、逆の循環に陥ることのないよう政策当局の適切な対応を期待したい。

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