わたしの意見-
水野 創

アベノミクス逆循環への対処策が欲しい

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年8月17日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 外国為替市場では一時99円/ドル台をつけ、年初来の円高・株安を起点にしたアベノミクスの逆循環の流れが止まらない。米国株式市場が史上最高値謳歌の一方、わが国日経平均株価は昨年の20,000円に遠く、17,000円台への復帰にも苦労している。

 昨年までの蓄積で大企業を中心に利益水準は高く、当初、逆循環の影響はマインド面にとどまっていた。

 しかし逆循環に入って半年以上が経過し、マイナス金利導入(1月)、金融緩和の強化、9月の総括的検証の予告(7月)など様々な手法をとってもその流れを反転できない中で、影響はより具体的な形になって表れつつある。

 2016年度の企業業績予想の下振れ、横ばい圏内の4~6月実質GDP統計、訪日外国人客の増勢鈍化、設備投資先行指標(機械受注統計)の悪化などである。

 企業業績が悪化してくると、企業活動への影響のほか、賞与をはじめとする雇用者所得面への波及が予測される。

 英国のEU離脱の国民投票、米国のトランプ現象など、市場の合理性とは異なる政治判断がもてはやされ、選択される風潮の下で、逆循環を解消する妙手を見つけるのは難しい。9月の総括的検証も、大統領選挙後の米国金融政策の動向如何では、春のECBの時と同様、ジャンケンの先出になってしまうリスクがある。

 もともとアベノミクスは「壮大な実験」と言われてスタートした長期戦だ。初めての逆境には、オリンピック・パラリンピック関連投資の本格始動、経済対策のつなぎ効果に期待したい。


●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。