わたしの意見-
水野 創

大統領就任初日のTPP離脱通告

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2016年11月24日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 トランプ次期米大統領が、大統領就任初日にTPPからの離脱を通告すると明らかにした(21日)。

 ドル高、株高、長期金利上昇の市場の基調に変化はない。しかしTPPは、名前は「環太平洋経済連携協定」だが、同時に中国が経済力の強まりを背景に「力による現状変更」を試みているのに対し、法の支配、人権など共通の価値観を持つ側の結束を固める政治的側面があったはずだ。

 次期大統領の意図が、価値観の共有より米国の経済的利益を優先するつもりなのか政策の全体像はよく分からないが、中国やロシアにそれを試してみたいと思わせる可能性は十分あると思う。

 中国はこれまでにも米国大統領交代時に軍事的な衝突を起こしており今回も同様のリスクがある。
 (参考)
  2001.4.1ブッシュ大統領:海南島事件(米偵察機と中国戦闘機空中衝突)
  2009.3.9オバマ大統領:中国船、南シナ海で米軍海洋調査船を取り囲み退去要求

 またロシアは、次期大統領が米国内を優先する結果、欧州でのウクライナ問題に対する米国の圧力が減ると思えば、北方領土交渉を含む日本との関係改善の必要性も減ずる。12月の日ロ首脳会談の環境は厳しさを増したと思う。

 日ロ首脳会談に先立ち米国ではFOMCで金利引き上げが決定されるだろう。昨年の利上げは今年前半の世界中の市場に大激変をもたらした。今回は投機資金が相当程度米国に向かった後の再利上げであり特に米国内(と米国と同様の動きをたどっている日本)への影響が懸念される。

 17日に安倍首相に「ともに信頼関係を築いていくことが出来ると確信を持てる会談」と言わせたトランプ氏が、今後の政策の具体化の過程で、こうした懸念を吹き飛ばしてくれるよう願いたい。

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