わたしの意見-
水野 創

日米の金融政策決定に冷静な市場  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2017年9月22日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今週、日米の中央銀行は金融政策を決定する会合を開催し(米国19,20日、日本20,21日)、米国は保有資産縮小を決定しリーマンショック後の量的緩和政策に区切りをつけ、日本はこれまでの政策を維持した。

 市場はこうした政策判断を比較的冷静に受け止めており、会合の前後で若干の振れがあったとはいえ、大きく混乱することはなかった。2015年12月16日の米国の最初の利上げまでや、利上げ後トランプ大統領が選出されるまでの期間の市場の激動を考えると隔世の感がある。

 同時に、外国為替、株式、債券(長期金利)の各市場は、トランプ大統領選出直後のドル高、株高、長期金利高というそれぞれの市場参加者の期待に基づく整合性を欠いた動きから、ドルと長期金利の上昇に対する過度な期待の修正へと、整合性を取り戻す方向に調整されている。

 これらは、トランプ大統領就任後の実績に対する市場関係者の評価のほか、トランプ政権の下でも米国経済が着実な回復を遂げていること、地政学リスクは続くものの先進国のポピュリズム台頭の選挙結果への影響が米国大統領選挙以降一服していることなどによると思う。そしてその結果は、日本にとっても110円/ドル前後の為替相場、株高、マイナスの長期金利の回避と居心地の良い状況をもたらしている。

 もちろん地政学リスク、世界中に潜在しているこれまでの金融緩和によるバブルの存在などのグローバルな懸念材料、日本の構造問題に解決の兆しが見えないことなど課題も多い。企業は今のうちに将来に備え体力を強化しておきたい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。