わたしの意見-
水野 創

不安定な市場が続く

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年7月27日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 来週7月30、31日の日銀金融政策決定会合を控え、長期金利の動きが不安定になっている。

 超金融緩和の長期化で、スルガ銀行や東日本銀行の事件を含め金融機関経営に大きな影響が出てきている。今回行われる予定の「景気回復にもかかわらず物価が思ったほど上がらないのはなぜか」の検証をきっかけに、現在の政策に何らかの修正が加えられるとの観測による動きだと思う。

 しかし、現在動揺しているのは債券市場だけではない。株式市場、外国為替市場は米国トランプ大統領の中間選挙を目指した個性発揮を主因に変動幅を広げている。大統領は外交、貿易から為替相場水準や金融政策にも口を出し始めた。世界経済に対する見方もやや慎重になっている。

 国内でも、最新の経済指標で2017年度の成長率が見通しを下回ったうえ、2018年度についても年初に比べ慎重な見方に修正されつつある。異常気象や原油価格上昇等に伴う物価上昇による実質所得の低下の影響も気になるし、中期的には、労働力不足の強まりに対して政府が打ち出した外国人労働者の受け入れ拡大方針への考慮も必要になる。

 各市場と内外経済は相互に影響し判断の要素が増える上、7月の決定会合を越え、秋の中間選挙まで、この錯綜した状況は変わらない。

 ここまで錯綜した状況は「物価の検証」を打ち出した時点では想定できなかったと思うし、そうである以上、来週の決定会合で、日銀が内外景気・市場についての全体感を、市場関係者、国民にすとんと腑に落ちる形で説明することは至難の業だと思う。

 仮に、分析の結果がアベノミクスの評価にもかかわれば、自民党総裁選の議論になる可能性もあり話はますます複雑になる。

 結果的には、検証を行い、政策に手を付けるには間が悪かったと思う。いずれにしても市場も不安定な状況が続くだろう。

 厳しい環境の下で、どのような決定がなされるのだろうか。

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