わたしの意見-
水野 創

中間選挙前の失速

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2018年10月12日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 市場が動いている。米国株式市場が最高値を更新した後反落するのは、年初の動きと同じだが、今回は背景が大きく異なる。

 年初は、「減税効果もあって米国経済が成長を加速し、世界景気全体も回復を続ける」との見通しの下、昨年秋以降の急上昇分を調整し、上昇基調を回復した。一方、今回は、「金利上昇の影響が世界経済にも及ぶ上、米国の減税効果が来年には一巡し、トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争の影響がどこまで本格化するか心配」な状況の下で、最高値まで駆け上った後の反落である。

 今週発表されたIMFの最新の世界経済見通しでも、現在の景気回復がすぐに崩れるわけではないが、成長率の加速は望めず、先行きリスク要因の指摘も目立っている。

 こうした状況は、直感的には、市場が混乱し先行き不安の高まりから企業マインドも慎重化した2016年初のイメージに近いように感じる。

 中間選挙を控えトランプ大統領は局面転換・争点はずしの動きを乱発すると思うが、大統領の得意技が多数の関係者を相手とする市場には向いていないこと、既に壊された世界経済の枠組みの修復には時間と労力がかかることを考えると、底値の後、年初のように短期間で上昇基調を回復するのは難しいと思う。

 中間選挙の結果を待ち、さらに2020年大統領選挙を展望した動きに変化していくのではないだろうか。

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