わたしの意見-
水野 創

「年金財政検証」の世界

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年9月6日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 「老後2000万円不足」騒動の記憶が新しい中、厚生労働省の「2019年年金財政検証結果」が発表された(8月27日)。

 現在6割程度(2019年度61.7%)の年金の所得代替率が、将来は5割程度、最悪の場合4割弱まで低下するという内容だ(表)。直観的に、①所得代替率1割低下のインパクトがどの程度なのか、②検証の前提は妥当かが気になる。

 ①所得代替率の前提となる収入は現時点で月35.7万円、その1割は4万円程度となる。「2000万円不足」騒動時、現在で月5万円程度足りないということだったことを考えれば、家計への追加的影響は大きい。

 ②検証の前提条件をみると上位ケースはアベノミクスが達成されている場合で、現時点では実現していない。下位ケースは現実に近いが、現在の金利水準や今後の人口減少・高齢化の本格化(今後50年間の人口減少率は年平均▲0.7%程度)を考えると、やはり不安が残る。

 自己責任を強調する報道により、今後、ますます消費者の財布のひもを締めるだろう。国民一人一人が自分の状況を見極め、今から行動することが求められているが、今回の仮定、前提はイノベーションや働き方改革により日本経済全体の生産性を高めていくことがより重要なことを示していると思う。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。