わたしの意見-
水野 創

唐突!「見本になる先例ない」

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2019年8月30日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 米国FRBのパウエル議長が米中対立に苦慮して標記発言をしたと報じられている(8月24日、日経新聞)。

 そもそも経済は生き物であり、世界中で政治家が個性の発揮を競っている状況で、政治、経済の教科書や先例通りに政策を運営できるはずがない。日本では、先例のない状況の下で「躊躇なく」政策変更を行っている。

 そこで標記のような自信なさげな発言をすれば、市場や政治家からこれまで以上におねだり、介入を許すことになる。FRB議長の表現・対話力に起因する波乱の再発で、これで、議長と市場、大統領の力関係は一段と後者寄りになる。株式市場を中心に今後も一段と荒れるだろう。

 ①株式市場が最高値となった時期を見ると、日本、中国は2018年中、米国は政策見通しへの過敏な反応や大統領の中国政策をめぐるマッチポンプ的発言で2019年7月。

 ②2019年中の株式市場の高値と安値の差を見ると、米国は4,672.9ドルで前年中の差5,036.2ドルの9割を超える幅になっている。これに対して、日本は5割強、米国の標的となっている中国でも4分の3にとどまっている。

 ③高値から最近までの下落幅は米国が5%。これに対し日本は15%、中国は20%(いずれも程度)。

 債券市場での金利低下幅も大きく外国為替市場にも波及している。

 米国の相対的な強さ、中国の顕著な減速、英国の政治情勢、日本の消費税率引き上げとオリパラ効果など、各国の景気・政治の現状と先行き不安の強さを評価したうえで、荒れる市場に臨むことが必要だと思う。

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