わたしの意見-
水野 創

東日本大震災から10年―復興予算とその負担

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2021年3月1日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

 東日本大震災から10年、私たちは復興財源を支えるために税率2.1%の復興特別所得税を2013~37年まで25年間支払っている最中だ。

 今回の新型コロナウイルス対応では2020年度1~3次の補正予算だけで76.6兆円が投入されており、その将来の負担を考える参考に、これまでの復興予算とその負担について整理してみた(図表)。

 ①2011~19年度まで復興に投じられた国の資金は決算ベースで36.3兆円に上る。

 ②国の復興資金の流れの透明性を確保するため、2012年度に東日本大震災復興特別会計が設けられている。

 ③特別会計の歳入は2019年度までの累計で金額の多い順に、一般会計等他会計からの受け入れ(10.3兆円)、復興債(5.4兆円)、復興特別所得税・法人税(各2.7兆円、2.3兆円、計5.0兆円)、関連原子力事業者からの負担金等(復興税外収入等4.0兆円)の4つに大別される。

 ④復興特別所得税は毎年度概ね0.4兆円程度であり、今後の経済動向により振れはあろうが25年間で10兆円程度の規模となる計算だ。なお2012、13年度に徴収された復興特別法人税(税率10%)は1年1兆円程度の規模であった。

 特別会計の規模は年々縮小しており、仮に、今後復興債を新規発行せず、特別所得税を復興債の返済に充てることができれば、2037年までに復興債の返済は可能な計算になる。

 東日本大震災からの復興と新型コロナウイルス対策を比較して、予算規模がすでに約2倍に達していること、歳入面で関連原子力事業者の負担のようなものが期待できないことは明確だろう。

 76.6兆円を復興特別所得税同様、毎年0.4兆円ずつ返していくと192年かかる計算になる。

 程度の差こそあれ、今回は世界中が同じ課題を抱えているはずだ。世界中で新型コロナウイルスとの安定した共存関係を築くとともに生産性を飛躍的に高め、大いに稼いで借りを返すしかないと思う。

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