Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

上場企業の行動は中期的にも前向き─内閣府アンケート

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年3月7日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 内閣府は先週末、上場企業を対象に年1回実施している「企業行動に関するアンケート調査」について24年度の調査結果を公表。

 まず、今後3年間の日本の経済成長率については、実質+1.2%、名目+2.8%と名目成長率が高い見通し(表1)。最近5年間の変化をみると、実質は+1%強で安定的な一方、名目はここ2年で急速に高まっている。賃金上昇が明確となり、価格転嫁も進みつつあることなどから、適切な価格設定により成長は可能との見方のようだ。

 名目成長率見通しを業種別にみると、製造業の2.65%に対し、非製造業は2.97%と不動産業やサービス業が牽引する形で高めとなっており、内需型産業の方が日本経済に対して強気の見方にあることが窺われる。

 こうしたもと、中期的な設備投資や雇用のスタンスも前向きであることが確認された。向こう3年間の設備投資は、「増加」とする企業の割合が75.8%と、「減少」ないしは「予定なし」とする割合の10.8%を大幅に超過(表2)。また雇用についても、「増加」が75.2%と「減少」の11.5%を大きく上回った(表3)。

 設備投資に関連して、製造業で海外生産を行う企業の比率をみると、20年度の67.8%から24年度の63.1%へと低下し、5年後の29年度には61.0%へとさらに低下する見通しが示された。円安定着や経済安全保障の観点から、国内投資を優先することを反映しているように窺われる。

 外部環境については、トランプ米大統領が世界の景気低迷や分断を招きかねない政策を次々と打ち出しており、不確実性が高まっている。あまりやり過ぎると米国経済も返り血を浴び、来年の中間選挙にも影響しかねないので、トランプ大統領もいずれ現実的に対応していくものと期待しているが、少なくとも当面は警戒を怠れない。

 とは言え、今回の企業アンケート結果は、外部環境が大幅に悪化しない限りにおいて、日本経済が今後数年間も内需中心に総じて堅調な成長を持続する可能性の高さを示唆するものだ。

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