Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

春闘:賃上げは中小企業を中心に昨年比高め

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年3月17日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 連合が先週3/14日に公表した今春闘における賃上げ回答の第1回集計をみると、定昇を含むベースで5.46%と昨年同時点の5.28%を0.2%程度上回り、賃上げ率は91年(5.66%<最終集計値>)以来の高さ(図表1)。

 このうち組合員299人以下の中小企業の賃上げは5.09%と昨年同時点の4.42%を0.7%近く上回り、92年(5.10%<最終集計値>)に並ぶ高さ。大企業に比べ出遅れ感が強かった中小企業もキャッチアップ。

 賃上げ率を企業規模別にもう少し詳しくみると(図表2)、組合員300人以上の企業が5.47%、100~299人が5.26%、99人以下が4.39%と、規模が小さくなるにつれて低くなるが、99人以下の企業でも4%半ばとかなり高い。

 賃上げのうち定昇等を除くベースアップは85%の組合で集計されているが、全体が3.84%、中小企業は3.62%と、中小中心に昨年同時点(3.70%、2.98%)を上回る。99人以下の企業も3.02%(昨年2.85%)と3%台に上昇。

 昨年の例に基づくと最終集計にかけての下振れは限定的とみられ、全体でも中小でも5%程度で決着する可能性が高い。

 今回の特徴は、中小企業でも賃上げ率が高まり、ベースアップも3%を超えたこと。人手不足に特に悩む中小企業では、人材確保の観点から賃上げ止むなしとの考えが拡がっているためだろう。雇用全体に占めるウエイトの高さを踏まえると、春闘における中小企業の強さは日本全体の賃上げ率が今後も着実に高まっていくことを示唆。

 当初1年限りとされた高めの賃上げも3年連続となり、賃上げが当たり前の世界となってきている。今後は、まず人材を確保できるか、人件費の上昇を販売価格に転嫁あるいは生産性向上で吸収できるかどうかが、企業経営の優劣に影響するだけに、一層の企業努力が求められる。

 ちばぎん総研では、千葉県における春の賃上げに関する定性的なアンケート調査を毎年実施している。調査結果の公表は例年ゴールデンウィーク明け。そのタイミングで、千葉県企業の賃上げ動向についてご報告したい。

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