Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

IMF世界経済見通し─トランプ関税で成長は明確に下振れ

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年4月23日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨夜、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。副題は“A Critical Juncture amid Policy Shifts”(政策転換の中、重要な分岐点に)。約100年振りの大幅関税を中心とした米国による政策転換の影響を織り込んだ見通しだ。トランプ関税は4/4日時点で判明していたものを前提(自動車等25%、相互関税は当初発表分<日本24%、中国34%など>)。

 経済成長は明確に下振れ、インフレは小幅上振れ。リーマンショックやコロナショック時のような深刻な景気後退までは想定していないが、近年の中では低めの成長で、貿易戦争の行方次第では下振れるリスクも指摘する。

 世界経済の成長見通しをみると(表1)、24年+3.3%のあと、25年+2.8%、26年は+3.0%。1月見通しと比べると25年が▲0.5%、26年が▲0.3%と明確な下振れ。当事者米国や隣国メキシコなどの下振れが目立って大きいが、中国も大きめの下振れ。日本も世界平均に近い下振れとなっている。

 消費者物価上昇率の見通しは(表2)、24年+5.7%のあと、25年+4.3%、26年+3.6%と緩やかに鈍化するが、1月対比では25年、26年とも小幅上振れ。これは、米国のインフレ上振れやグローバル・サプライチェーンの混乱を見込んだため。ただし、輸出が落ち込む中国は逆にインフレが下振れるとの見通し。

 今後の日本経済の展開を見る上では、①関税交渉がどう進展するか、②世界の金融市場がどう反応するか、③それらを睨みつつ日本企業の支出行動がどう変化するか、などが重要なポイント。

 トランプ大統領の行動をみると、金融市場が不安定になると強硬姿勢を緩めることを繰り返しているため、最終的にはある程度現実的な対応を採るものと期待される。ただし、中国をはじめとした諸外国が強硬な姿勢を採った場合には貿易戦争がさらに激化していくリスクや、対ロシア・中東政策次第で地政学的リスクが一段と高まる可能性も考えられるだけに、引き続き十分な警戒が怠れない。

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