Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
「地方創生2.0基本構想」(令和の日本列島改造)
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年6月10日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
政府は6月3日、有識者会議を首相官邸で開き、今後10年の指針となる「地方創生2.0」の基本構想案を示した。今月中旬にも閣議決定し、実行に向けた「総合戦略」を今年中に策定する方針としている。大まかな方向性は昨年12月の「基本的な考え方」や1月の石破総理の「施政方針演説」で示されていたが、今回の基本構想案はそれらを多少肉付けしたものだ。
構想案は地方創生2.0について、「単なる地域活性化ではなく、我が国の活力を取り戻す経済政策であり、多様な幸せを実現するための社会政策であり、そして地域が持つ本来の価値や楽しさを再発見する営み」とする。
政策の5本柱は以下のとおり。
(1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生
(2)稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生
(3)人や企業の地方分散
(4)新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用
(5)広域リージョン連携
2014年に定めた地方創生1.0との比較は難しいが、当時の「まち・ひと・しごと創生」にとどまらない「令和の日本列島改造」と位置付け、経済全体の活性化にとって地方創生が不可欠との認識を示す。また、10年の情勢変化を踏まえ、特に以下の点を強調しているようにみえる。
①地域社会に根付くアンコンシャス・バイアス等の意識改革を含め、若者や女性にも選ばれるための地域創り。
②スタートアップを活用した地域課題の解決や新産業の育成。
③地方分散については、移住が進みにくい下で、まずは「ふるさと住民登録制度」を活用した2地域居住などによる関係人口拡大に注力(目標1千万人)。
④AI・デジタルなど新技術は地方分散のための大きなツールであり、その徹底活用によってデータセンター誘導、GX産業立地(脱炭素型の産業団地整備)などを促進。
⑤多くの地域や多様な主体(産官学金労言士)の間での連携強化。都道府県域を超える広域リージョン連携の枠組みを創設し、好事例を普遍化。
まだ基本構想の段階で具体策には乏しいが、千葉県にとっても重要な内容を含むものと認識しておく必要がある。実行に向けた総合戦略の策定を待ちたい。
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