Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

イスラエル・イランの停戦合意

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年6月24日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 本日、米トランプ大統領がSNSで「イスラエル・イラン完全停戦で合意」と伝えた。

 現時点で両国からの正式な発表はないが、先週末に米軍がイランの主要な3つの核施設を攻撃し、イラン国会が「ホルムズ海峡の封鎖方針」を承認したこともあって、中東情勢の先行き不透明感が高まっていただけに(米国のイラン本土攻撃は初めて)、停戦合意できればひとまず朗報だ。

 日本にとっては主に3つの点で意味がありそうだ。

①トランプ関税によって不確実性が高まる世界経済にとって、中東情勢の悪化は更なる不透明な要因であったが、いったん鎮静化に向かうことの意義は大きい。

②ホルムズ海峡の封鎖には至らないとの見方は多かったとは言え、日本では原油の中東依存が大きいため、中東原油を巡る不確実性の低下はプラス。また最近は原油高に加え、有事のドル買いで円安気味となっていただけに、その修正は物価高に悩む日本にとって望ましい展開(図1、2)。

③実際の軍事攻撃には臆病(チキン)と揶揄されていた米トランプが、今回の速やかな軍事行動により紛争鎮静化に至ったこと。この背景は不明だが、将来に万が一、台湾有事が生じた際にも、情勢次第で米国が軍事関与する可能性を期待させるものかもしれない。

 ただ、このうち③についてはあくまでも推測。中東と台湾では事情が異なるし、トランプ政権の行動は全く予測不可能でもある。また、これまでのトランプ政権の発言に基づけば、米国が台湾有事に軍事関与する前提として、台湾や日本の軍事力強化、さらには日本の米軍支援の強化といった応分の負担が強く求められることとなる点も十分に認識しておく必要がある。今回もイスラエル自身のイラン攻撃がきっかけとなったものだ。

 イスラエル・イランが停戦合意したとしても、トランプ関税の先行きは読みづらいことに加え、ウクライナ情勢に進展はなく、中東情勢そのものの不透明感が払拭されたわけではない。世界経済については、最悪の事態が回避された程度であり、先行きの展開は引き続き注意深くみていく必要がある。

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