Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
成田空港の機能強化を巡る動きは着実に前進
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年7月7日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
28年度末を目途とした滑走路拡充やその後のエアポートシティ作りといった成田空港の機能強化の取組みは、過去1年で方向性がかなり明確になり、最近でも重要な動きが相次いでいる。
私が特に注目する動きを幾つか挙げると以下のとおり。
① 昨年7月の成田国際空港会社(NAA)と有識者による、「『新しい成田空港』構想2.0」の取り纏めと国交省への報告。
② 同8月の岸田前総理による、「成田空港機能強化は国家プロジェクト」である旨の発言。これによって、中央省庁の対応スピードが上がった。
③ 同12月の県による、空港周辺で集積を進める産業の提示。地域未来投資促進法による支援対象について、従来の物流に精密機器、航空宇宙、健康医療、農業、観光を新たに加えた。
④ 本年4月の県およびNAAによる、「NRTエリアデザインセンター(NADC)」の設立。空港周辺でのエアポートシティ構想の策定や産業拠点形成に向けた取組みなどが当面の実施業務。
⑤ 同6月の国による、千葉県全域の国家戦略特区指定の方針決定。東京圏の特区指定は2014年に始まり、東京都と神奈川県が全域指定される一方、千葉県では成田市と千葉市にとどまっていたが、県全域に拡がることとなった。
⑥ 直後のNADCによる「エアポートシティ構想」の策定、および県、周辺9市町、国交省、NAAから成る四者協議会での合意。それらを受けて県が「成田空港『第2の開港』を起点とするアクションパッケージ」を公表。
成田空港の機能強化については「成田空港周辺での出来事」とみる事業者も少なくないが、国家戦略特区の千葉県全域指定により、機能強化の効果が県全域に及びうることが明示された。
「アクションパッケージ」の資料では、成田空港周辺エリアだけでなく、千葉・幕張新都心エリア、京葉臨海エリア、アクアライン着岸地周辺エリア、柏の葉エリアを示し、多くのエリアで国際競争力のある新事業創出を目指すとされている。
また、特区として規制・制度改革は全域で適用される方向。従来から定められている62項目の特例措置に加え、千葉県が新たな8つの改革事項を提案しており、さらに幾つかの項目の提案も調整中の模様だ。提案には、航空物流(外国人人材の活用拡大)、介護(外国人人材の確保に向けた検討)、都市計画(民間による都市計画決定の提案)などの分野が含まれる。
近年、これだけの大規模プロジェクトが進行している都道府県は見当たらない。成田空港周辺以外の事業者でも、アンテナをより高くして、ビジネスチャンスを見出していきたい。
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