Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

日銀会合:物価見通しは上振れも、利上げにはなお慎重

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年8月1日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日銀は昨日(7/31日)、金融政策決定会合を開催し、四半期毎の展望レポートを公表。経済・物価の見通しは4月会合から物価中心に上振れ、金融政策は現状維持(政策金利0.5%)を決定。

 展望レポートにおける経済・物価見通しの概要は以下のとおり(表)。

 ①GDP成長率は、25年度が0.6%と4月対比で+0.1%の上振れ。26、27年度は0.7%、1.0%と不変。25年度が上振れたのは、トランプ関税の縮小などを受けて、世界経済見通しが多少上振れた(IMFによる25年見通しは4月対比で+0.2%)ことなどの影響とみられる。

 ②消費者物価上昇率は、25年度が2.7%と、食料品価格高を主因に4月対比で+0.5%の上振れ。26、27年度は1.8%、2.0%と、ともに+0.1%の上振れ。

 ③リスクバランスは、経済は下振れリスクの方が大きいとする一方、物価は概ね上下にバランスと評価。4月時点では、経済・物価とも下振れリスクが大きいとしていたので、最近の強さを踏まえ物価のリスクバランスを引き上げ。

 通商政策については、「日米間の交渉が合意に至るなど、前向きな動きがみられている」としつつも、「内外経済・物価に及ぼす影響を巡る不確実性は高い状況が続いている」、「打ち出された各国の通商政策は様々な経路を介して内外経済を下押しする方向に作用する」と記述。

 先行きの金融政策に関しては、「政策金利を引き上げていく」方針を維持すると同時に、「不確実性が高い状況が続いていることを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要」と、4月時点と概ね同様の考えを示した。

 会合後の記者会見で植田総裁は、「不確実性は低下したものの、影響まで考えると一気に霧が晴れるということはない」、「見極めにかかる期間は、現時点で確定的なことは言いづらい」と発言。

 日銀は今後、トランプ関税の影響を注視しながら、来春闘でも相応の賃上げが実現する方向性が見えてくれば、利上げを再開すると予想される。

 利上げのタイミングは12~1月が中心であり、内外経済が思いのほか堅調かつ円安も進むような場合には10月の可能性もあり得る、といったイメージを持っておけば良いと思われる。

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