Business Letter
「点描」
社長 前田栄治

千葉県の基準地価─3つの特徴に大きな変化なし

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年9月18日号に掲載)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 今週、25年の基準地価(7月1日時点)が公表された。全国の地価は、全用途平均が前年比+1.5%と24年(+1.4%)を僅かに上回り、4年連続の上昇。

 千葉県については、3つの特徴に大きな変化はない。

① 地価上昇率を全用途平均でみると(表1)、前年比+3.7%と11年連続の上昇。東京都には及ばないが、神奈川県に近く、埼玉県を上回る。用途別には、物流施設への需要拡大などから工業地が最も高いが、都心の住宅価格高の影響から住宅地も上昇率をジワジワ拡大。

② 地価水準を全用途平均でみると(表2)、1都3県では最も低い。埼玉県には近づいているが、東京都の約10分の1、神奈川県の4割。バブル・ピーク対比では7割下落と最低、ボトム対比では5割上昇と低め、バブル前の85年対比でも2割高にとどまる。

③ 地域別には上昇率のバラツキが大きい。東京に近い地域では上昇が目立つ一方、地方圏ではなお緩やかに下落。市町村別に全用途平均の上昇率をみると、1位の流山市が+12.1%である一方、最下位の銚子市は-2.8%。空港関連の集積が期待される成田市は+6.0%と高く、前年(+5.5%)を上回った。

 以上の結果からみると、千葉県の地価は、東京圏の中ではなお割安感があるもとで、住宅地をはじめとした都心の地価上昇の波及、近年の高速道路網の整備や成田空港の機能強化などを考慮すると、基本的にはなお上昇余地が相応にあるとみてよさそうだ。

 ただし、千葉県の地価上昇は、東京の不動産価格の大幅高に支えられている面が少なくない。とりわけ、都心マンションの価格は新築・中古とも1億円を超え、年収比でバブル期並みに上昇(東京カンテイ調べ、23年17.8倍<90年18.1倍>)している点は気になるところ。

 都心マンションについては、適地不足に伴う供給制約に加え、円安等に支えられた外国人需要の増加、パワーカップルの需要増といった、価格上昇を正当化する「ストーリー」が語られるようになっているだけに、注意してみていく必要がある。

 

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