Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
IMF世界経済見通し─慎重さを残すが上振れ
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2025年10月22日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
先週、IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しが公表された。副題は「変動期の世界経済、見通し依然薄暗く」(Global Economy in Flux, Prospects Remain Dim)。
IMFでは4月、トランプ関税の影響を織り込み25、26年の世界経済見通しを大きく下方修正したが、7月に続き10月も25年を中心に上方修正。両年を併せれば4月下振れの約3分の2を取り戻し、3%強の成長が続く姿(下表)。ただ、関税の影響が大きい米国自身やメキシコの戻りはやや鈍く、カナダはなお下振れ気味。

IMFは上方修正の理由として、①トランプ関税が4月に打ち出されたものに比べ圧縮されたことや、②世界的なAIブームの投資押上げ効果が大きかったことを指摘。ただ同時に、③関税を課す前の駆け込み的な投資や消費の嵩上げにも言及した。
また、リスクとしてはなお下方に注意が必要との見解を示した。引き下げられたとは言え米国の関税の歴史的な高さのほか、AIのバブル的な様相、中国経済の構造的な苦境、中央銀行の独立性に対する圧力なども指摘した。
確かに世界経済の先行きは地政学リスクも含め不透明だが、トランプ関税が懸念されたような経済を大きく下押しするものとなっていないことは前向きに評価したい。トランプ大統領は、当初の高率関税をディールの手段に用い、最終的には自国経済が返り血を浴びないよう、現実的な落としどころを探ったということだろう。
日本経済は、デフレ脱却に伴う企業の前向きな支出行動に、高市政権の「責任ある積極財政」(規律も意識した支出拡大)も加わり、国内需要は暫く堅調に推移する公算が高い。海外経済や国際金融市場が大きく足を引っ張らなければ、日本経済全体としては底堅さを維持しそうだ。
世界的に地政学、政治、テクノロジーなどの面で変化が大きく、国内でも人手不足やコスト高への対応力が問われるといった、企業経営にとって難しい要素は多いが、マクロ経済環境についてはまずまずな状態が維持されると考えておいてよいだろう。
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