Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
高市政権は市場からも信任を得られるか
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2026年2月12日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
2月8日の総選挙で、自民党は単独で3分の2の議席獲得という歴史的な大勝利を遂げた。自らが争点とした国民からの「総理・高市早苗」への信任が得られたということだろう。
金融市場の反応は好意的。今のところ株価が大幅に上昇、為替は初め円安に反応したがその後は円高に振れ、長期金利も総じて落ち着いている。
円高には米国独自のドル安要因(中国による米国債売却の思惑)が影響。とは言え金融市場全体の良好な反応は、基本的に、①混乱する世界情勢の中で日本の安定した政権運営が実現すること、②「責任ある積極財政」が文字通り財政の健全性を維持しつつ強い経済に繋がること、などが期待されているためだと考えられる。
ただ、PER(収益に対する株価の比率)が20倍(過去数年は15倍程度)を超えるなど、短期的には株価の過熱感が窺われる。今のところ、高市政権が実施した経済政策は、昨年末の積極的な総合経済対策だけであり、如何にして「強い経済」が実現するかの具体的な道筋は見えない。市場の期待が過大になっている可能性がある。
また、財政の健全性維持に関しても懸念はある。食料品の消費税減税について、選挙中は高市総理が発言を控え自民党内でも反対意見が少なくないとみられたため、市場では必ずしも実現する訳ではないとの見方がある。高市総理は「国民会議で検討を加速し夏前に中間とりまとめ」と実現を確約していないものの、ここまで選挙で大勝すると、国民にとっては公約と見えることから実現せざるを得なくなる可能性が高まる。
2年の期限付きでありその後に「給付付き税額控除に移行」との理想論を掲げるが、いったん引き下げると再引き上げは容易ではなく、毎年5兆円の財源が必要となる。また、3月に予定されている高市・トランプ対談では、防衛費の引き上げを要求される可能性もある。金額次第では、消費税と合わせ毎年10兆円以上もの財源をどう捻出するかも課題となりうる。
物価高から国民生活を守る、強い経済を作る、防衛力を高めることは、日本にとって極めて大事な課題だ。同時に、積極財政を行ううえでは、人手不足経済の下でインフレを加速させず、財政の健全性も維持するために、最大限の工夫や説得的な説明が必要である。そうでないと、為替市場や債券市場、ひいては株式市場でも、物価安定や健全財政への疑念を高めることになる。
市場は時として気まぐれだが、発する警鐘に耳を傾けることは大事だ。国民から信任を得た高市総理が市場からも信任を得られるよう、思い切りながらもバランスを意識した経済政策運営となることを期待したい。
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