Business Letter
「点描」
社長 前田栄治
イラン情勢─再び省エネに注力を
(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2026年3月13日号に掲載)
前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]
イラン情勢が目まぐるしく変化し、原油価格も乱高下している。代表的指標であるWTIでみると、一時1バレル120ドル近傍まで上昇した後、いったん70ドル台まで低下したが、再び90ドル台となっている。こうした中、日本をはじめ主要国は過去最大規模の石油備蓄放出を決定した。
併せて高市政権は、ガソリン価格が1リットル170円程度を上回らないよう国が補助する方針も示した。ニッセイ基礎研究所では、原油100ドル/バレル、為替160円/ドルを前提とすると、ガソリンが196円/リットルとの試算結果を公表。ガソリンが200円超えとなるリスクも無視できず、政府は国民の生活支援やインフレ期待抑制の観点から、補助の導入を決めたのであろう。
仮に原油100ドルが定着すると、日本へのマイナス効果はどの程度となるか。25年の輸入実績に基づき一定の前提を置いて試算すると、原油・LNGの輸入金額が8兆円程度も増加。これは名目GDPの1.2%に該当し、食料品にかかる消費税ゼロ化による減税額5兆円を上回る。かなり大きな海外への所得流出が起きることを意味しており、原油高が続いた場合には、財政への負担も含め日本へのダメージは大きい。
[試算の概略] 25年の輸入額は、原油が9.6兆円、輸入価格が原油価格に連動するLNG(液化天然ガス)が5.7兆円で計15.3兆円。
WTI価格は25年65ドル程度であり、それが100ドルになると約1.5倍となるため、15.3兆円×0.5(値上がり分)で7.7兆円。
今回のイラン情勢がどの程度長期化するかは不透明であり、短期で終息する可能性もゼロではない。ただ長い目で見た場合、世界の分断や地政学リスクの大きさを踏まえると、こうした紛争やそれに伴う資源価格高が時折生じるリスクは否定できない。
日本としては、エネルギー安全保障の観点からは、原発再稼働を含めた供給源の多様化を図ると同時に、省エネの動きを再び加速させることが重要だ。
エネルギー効率をみると、日本では2度のオイルショックを経験し70~80年代に大きく効率化が進んだが、過去20~30年はその動きは緩やかなものにとどまる。その結果、90年頃には先進国で日本が最も高いエネルギー効率を誇っていたが、現在は英国やドイツなどの後塵を拝する(表)。脱炭素も大事だが、省エネについても、企業の技術開発や投資に対する支援などを含め、国を挙げて再注力する必要がありそうだ。

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