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再び国挙げて省エネを 効率性、英独に後れ

(共同通信社 2026年4月8日配信)

前田 栄治[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃開始以降、イラン情勢が目まぐるしく変化し、原油価格も乱高下している。代表的指標の米国産標準油種(WTI)でみると、一時1バレル=120ドル近傍まで上昇。米イランの一時停戦合意が伝わると100ドルを割った。


 日本は原油輸入の9割以上を中東に依存しており、価格はドバイ原油に連動する。ドバイ原油は昨年まではWTIとおおむね同水準であったが、本年3月以降はホルムズ海峡の事実上封鎖などを反映し、WTI対比20~30ドル高値で推移している。最近では120~130ドル程度と、2025年平均価格の70ドル弱に比べ8割程度高い。


 日本の原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入額は25年で約19兆円。ガスの中東依存度は1割程度と小さいが、価格は原油に連動するものが多い。このため現在の価格水準が続く場合、同量の原油・ガスなどが確保できるという前提で、日本から海外への所得流出が年間約15兆円も増加する。名目国内総生産(GDP)の2~3%、食料品の消費税ゼロ化に伴う減税額5兆円の3倍にあたり、日本経済に大きなマイナスの影響を及ぼす。


 高市政権は、ガソリン価格が1リットル=170円程度を上回らないよう国が補助する方針を示した。ニッセイ基礎研究所の試算に基づくと、ドバイ原油125ドル、為替1ドル=160円を前提とすると、ガソリン価格は224円程度になる。政府は、国民の生活支援の観点から補助の導入を決めたとみられる。


 この方針は激変緩和措置として評価できるが、長期化すれば財政負担が大きくなる。原油高に伴う貿易赤字に加え財政赤字の拡大も注目されると、為替が円安に振れることを通じて、日本経済へのダメージが増す。


 今回のイラン紛争がどの程度長期化するかは不透明であり、遠からず終息する可能性もある。ただその場合でも、中東の石油施設へのダメージなどを踏まえると、しばらくは原油価格が紛争前に比べ高めで推移し、量についても十分に確保できるか不透明だ。


 日本の原油備蓄は、なお200日程度あるが、備蓄が少なく輸入依存が相応に高い石油化学製品の不足への対応も含め、そろそろ国全体として節約する方向にかじを切る必要があるのではないだろうか。その際、ガソリンなどへの補助金を縮小することで、財政の持続性とともに国民の節約意識を高めてはどうか。


 また長い目で見た場合、世界の分断や地政学リスクを踏まえると、今回のような紛争やそれに伴う資源価格高が時折生じる可能性も否定できないだろう。日本にとって、エネルギー安全保障の観点からは、原油の調達先拡大や原発の再稼働を含めたエネルギー供給源の多様化を図ると同時に、省エネの動きを再び加速させることが重要だ。


 日本は2度のオイルショックを経験し、1970~80年代にエネルギー効率が大きく向上したが、過去20~30年は動きが緩やかで、現在は英国、ドイツなどに後れを取る。近年注力している脱炭素は、エネルギー効率の向上にもつながるが、コストを高める面もある。


 今後は脱炭素と同時に、省エネそのものにも焦点を当て、技術開発や企業投資に対する支援、家計の省エネ化の補助を含め、国を挙げて再注力する必要があるだろう。

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