わたしの意見-
水野 創

トランプ次期大統領のツイッター商法

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」2017年1月13日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 トランプ次期大統領の選挙後初の記者会見が開かれた(11日)。米国内の雇用創出優先、保護主義に対し日本ではとりあえず円高、株安方向の小動きで推移している(12、13日)。

 今回の記者会見で、20日の就任演説を待たず次期大統領の考え方が確認され、就任時の市場のかく乱要因が減った点は評価できる。

 一方で、記者会見まで執拗に行われたツイッターを使った個別企業への攻勢とその成果の自賛は、ポピュリズムが進行するインターネット社会での衆人環視下の優位な交渉手段として今後も活用されるだろう。

 ただ、今回の手法は日本で頻繁に行われてきた政府の口先介入とは大きく異なる(カッコ内日本)。

 ①一方通行(双方向。会合で経済団体に依頼)
 ②いつ通告されるかわからない(予め会合がセットされる)
 ③短文の結論のみ(理由を丁寧に説明)
 ④優越的な立場を活かしペナルティで脅す(実行した場合には補助金などの奨励策)
 ⑤世界中の読者と同時、衆人環視下(インターネットのほかマスコミを通じて報道)

 こうした一方的な交渉が通じるのは、大衆が関心を持つ、米国内で知名度の高い企業や国に限られるうえ、以下の理由から賞味期限には疑問符がつく。

 第1に、対象となる可能性のある企業・国は今後当然これへの対応策を練る。緒戦はうまくいっても、相手の対応が進めば成果を上げるのは難しくなる。強腰の発言をしていても、所詮は交渉術と足元を見られる可能性も強い。第2に、この手法では相手との中長期的な信頼関係は生まれない。敵役を作り、戦い続けることになる。第3に、個別企業の戦果の積み上げでマクロ指標・市場が望ましい方向に動くかは分からない。

 ファミリー企業のオーナー経営者で巧みな商売人から、昨年の安倍・トランプ会談後の「ともに信頼関係を築いていくことが出来ると確信を持てる」大統領に変身するよう期待したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。