わたしの意見-
水野 創

復興への道筋(3)―― 復興後の世界

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」4月5日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 政府の復興策が報じられるようになってきた。

 現時点は当面の支援策や復興の大枠が断片的に示されている段階だが、政府は、「10年先を展望した、復興の基本方針」をできるだけ早くとりまとめる必要がある。

 とりまとめを急ぐ理由として、以下の2点が指摘できる。
 1.国民に希望と行動の指針を示す。
 2.当面の復旧策が不十分だったり、その後の復興策の阻害要因となることを防ぐ。

 そして、今回の復興計画においては、自然との共存、安心・安全な国づくりと共に以下の諸点が含まれるべきである。

 1.省エネ、省資源型の国づくり
福島原発事故により電力利用について使用量、料金双方の抜本的な見直しを迫られることになる。また、新興国の成長に伴い資源需給は一段と逼迫傾向を辿ろう。
わが国は産業界を中心とした節電や従来から先行していた省エネに関する更なる技術革新を図るほか、ウェイトの高い家庭の自然エネルギーの活用、省エネ推進(蛍光灯の代替となるLED電球の開発、太陽光・風力発電等の普及策実施等)、さらには地域全体としての「スマートシティ」の推進が求められる。

 2.過疎、高齢化、後継者育成の国づくり
今回被災した地域には、従来から、過疎、高齢化、後継者不足に悩んでいた地域が多く含まれる。
復興後は、コンパクトシティや行政区画の見直し等を含む新しい地域づくりの枠組みが示される必要がある。

 3.拠点分散(国内、グローバル)、業務継続を意識した国づくり
今回の経験を踏まえ、グローバル化が進む中で大規模災害が発生しても、国内、世界全体の生産が停止することがないよう、生産・調達体制を再構築する必要がある。
この点は、本社機能、司法・立法・行政の国家機能についても同様である。

 4.成長戦略分野の再構築――農業、観光
昨年6月に決定された政府の新成長戦略は、原発事故の発生により、当面、「パッケージ型インフラの海外展開」や「訪日外国人3000万人プログラム」等の実現が難しくなり、大幅な見直しが必要となった。これを復興後の国づくりと整合性を取って再構築する必要がある。
また、現に起こっている風評被害に対しては早急な対応が必要となる。農業・漁業、観光等について風評被害を防ぐ正確な情報の周知、風評被害にあった地域を支援する国民運動の展開が考えられる。

 今回の復興計画策定の過程では、短期間の作業の中で、それぞれの地域の声をどのような形で吸収し、地域の特性も活かしていくかということも課題となる。

 政権交代後の沖縄米軍基地やTPPをめぐる対応のように、地域の状況を理解しない「トップダウン」による復興計画が示されることで、過去の成田闘争のような不幸な事態が起きないよう願いたい。

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