わたしの意見-
水野 創

復興への道筋(6)――千葉県の復興計画(2)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」4月8日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 千葉県の復興計画について、私の意見を続けたい。

 繰り返しになるが、今回の被災では復興を阻害する3つの要因(余震・原発事故・計画停電)があり、復興本格化までに要する時間は通常の地震被害に比べ長く、また、千葉県は首都圏の中で相対的に厳しい環境の下にある。

 しかし、阻害要因が除去され、本格的な復興期に入れば、千葉県の産業構造が力を発揮すると考えられる。そこに向けた希望と行動の指針として復興計画は大きな意義を持つと考えている。

 2.傷ついたブランド力の再生
 今回被害を受けた地域は、それぞれ千葉の重要な機能を担っていた。
 復興に当たりその機能を強化し、ブランド力を再生・強化する。
(液状化現象)東京湾に沿った浦安市から千葉市(稲毛)まで、香取市(佐原)、我孫子市(布佐)
(津波)旭市
(火災)京葉臨海コンビナート
(放射性物質)香取市、旭市、多古町
 このうち液状化現象の被害を受けた、東京ベイエリアは、東京ディズニーリゾートや住宅地、鉄鋼・食品工業地帯として、また、佐原は農業、歴史的観光地として高いブランド力を有していた。
 その復興に当たっては用途に即した地盤対策の方法、費用負担、上下水道・道路等のインフラ整備、被害を受けた歴史的建築物再建等についての指針を示す。
 また、放射性物質の被害については、津波、液状化現象の被害を受けた地域と重なる上、今後も対象範囲、放射性物質の種類が拡大しそれに応じた対応が必要になる可能性がある点を指針に反映する必要がある。

 3.風評被害からの脱却
 原発事故により県内農林水産業、観光は風評被害で大きな影響を受けており、しかも、解消の目途が立っていない。
 今後の原発事故の収束状況にも因るが、放射性物質に関する測定結果とその評価を、国内外に網羅的かつ迅速に提示する体制を、インターネットなども活用して整え、風評の生じる余地のない状況にする必要がある。
 なお、県内観光地は、海外旅行者の多い地域と国内旅行者の多い地域の双方がある。上記体制整備は海外向け、国内向けを同時に行うことが適当であろう。また、国内については風評被害の影響を少なくするため、来県・県内相互訪問キャンペーンなどの企画も期待される。
 また、当面の海外旅行者の減少が予想されるため、既に始まっている民間プロジェクト等の見直しを含む今後の県内投資に対する影響についても動向を注視し、状況変化に応じ対策を講じる必要がある。

 4.復興のための基盤整備
 成田国際空港の年間発着枠30万回への拡大、東京湾アクアラインの社会実験、圏央道の未開通部分の建設等の既存プロジェクトは、復興計画達成のために必須のインフラとして位置づけ推進する。
 今後、首都圏が被災した場合に備えて、複数交通路確保の観点から、成田国際空港・圏央道・東京湾アクアライン・都心のルートの優先度を引き上げ早期開通することが望まれる。

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