わたしの意見-
水野 創

G7「成長減速の兆候」の憂鬱

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」9月12日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 9日のG7財務相・中央銀行総裁会議は世界経済に「成長の減速の明らかな兆候がみられる」と指摘した。①ギリシャ、イタリア等の債務返済問題に対し先進国の政策当局が有効な対策を取れないまま、②これまでの「下振れリスク」が遂に現実の「減速の兆候」となり、③当局もそれを確認せざるを得ない状況に追い込まれてしまったという印象である。個別国の問題に対する、グローバル社会の関与の難しさが改めて痛感される。

 各国が取り組んでいる過剰・構造問題の解決には、時間と、それぞれの国民の痛みを伴う施策が必要となる。そして、そうした施策の推進には政治のリーダーシップ、議会での合意形成が必要であるが、わが国を始め、米国、EUそれぞれがこの点に課題を抱えている。昨年来の選挙により政治的な不安定さは全体として強まっており、少なくとも次の選挙までこうした状況が続くのは避けられない。

 8月初めの米国債の格付け引下げ以降の為替、金融資本市場の動揺の一因は、膨れ上がっている投機資金にこうした政治情勢を衝かれたものと考えられるが、こうした振れの大きい状況も上下双方に当面続くことになろう。

 市場の動揺が実体経済のかく乱要因になるとともに、「成長減速」が明確になることにより企業マインドや経済活動が低下することも懸念される。こうした状況の下で、自分自身のマインドが萎縮しないよう鼓舞する必要があるが、わが国の新政権が、復興政策の加速、エネルギー政策の見直し等を含め政策面で迅速に成果をあげ、マインド改善につなげるよう強く期待したい。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。