わたしの意見-
水野 創

金融緩和強化とリスク・バランス 

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」10月28日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 日本銀行は27日の政策委員会で金融緩和の強化を決定した。今回の強化により来年末までの日銀の長期国債買入額は5兆円追加され(14ヶ月で割ると月3,500億円の追加)、毎月の長期国債買入額は平均すると2兆3千億円程度となる。

 また、同時に示された2013年度までの日本経済の見通しは図表1の通りである。

 成長率の見通しは、①海外経済の減速や円高の影響から7月時点の見通しに比べ幾分下振れているが、②引続きわが国の潜在成長率を上回る成長が続く姿となっており、こうした需給バランスの改善を反映し、③物価も2013年度にはゼロ%台半ばになる姿を見通している。

 「物価が安定した」と評価できる「2%以下のプラスで、中心が1%」にはまだ先が長いが、2013年度後半には展望が開けてくることが期待される。

 この間、政策運営上重視すべきリスクとして、①バランスシート調整が米国経済に与える影響、②欧州のソブリン問題の財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用に対する影響、③新興国・資源国の物価安定と成長の両立、④海外情勢の不確実性や為替・金融市場の変動がわが国経済に与える影響、⑤国際商品市況の先行きをあげている。

 それでは、こうしたリスクを政策委員はどのくらいのものと見ているのか。参考として2012年度成長率についてのリスク・バランス・チャート(図表2)をみると、分布はやや下方向に偏っており、委員は下方リスクが高いと考えているが、裾野の下限は7月時点と変っていないことが示されている。(チャートの詳細について興味のある方は、日本銀行のホームページでご確認ください。)    

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