わたしの意見-
水野 創

リーマン級ショック再発のリスク  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」11月24日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 金融緩和の強化を決めた10月27日の日銀金融政策決定会合で、9人の政策委員のうち何名かは「欧州ソブリン問題を巡る国際金融資本市場の緊張が続く中で、発生確率は必ずしも大きくないものの、リーマン・ショックのような、わが国経済に極めて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックが生じるリスクについても、意識しておく必要がある」と述べている(11月21日発表の議事要旨)。

 これまで私は、各国政策当局はリーマン・ショックの世界経済への影響が如何に大きかったかについて十分共有しており、そうしたショックが再発しないよう必要な政策が採られてきたし、今後も採られるはずだと考えてきた。しかし、政策当事者の中からもショックが生じるリスクが指摘されるほど事態は厳しくなってしまった。

 なぜ短期間にここまで追い込まれたのか。ショックを防ぐためには何が必要なのだろうか。

 政治面では、21日に赤字削減策を合意できなかった米国のように議会の対立が不安を煽る状況が続いている。野党は、与党の政策を攻撃できる経済の悪化こそ望むところなのだろう。ぎりぎりの攻防が何かの弾みで投資家の許容範囲を超えてしまうリスクは否定できない。議会が不安定な国の政治リスクは選挙まで続くだろう。

 経済面では、ギリシャ債務の50%削減により金融機関・債権者に実際に取りはぐれが発生した影響が大きいと思う。取りはぐれを経験した金融機関・債権者は、その再発を防ぐため、少しでも不安のある資産は避け、安全な資産にシフトする。欧州各国国債を始め金融資本市場でドミノ現象が生じているのはその反映であろう。この動揺を抑えるには、金融機関・債権者の取りはぐれ懸念をなくすしかない。わが国の「預金全額保護」時代が想起される。これまでの諸施策に加え、債権者が安心できる、債権保護の国際的な枠組みを早急に構築できるとよいと思う。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。