わたしの意見-
水野 創

年末・年始を経て強まる「政治リスク」  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」1月12日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 昨年暮れ、野田政権は成長戦略より財政再建を優先しているのではないかと書いた(本レター12月22日号)。しかし、その後、年末年始の間に八ツ場ダム建設継続、整備新幹線未着工区間の建設決定等のばら撒き、社会保障・税の一体改革のうち「痛み」を伴う部分の先送りが相次いだ。これでは財政再建優先ですらない。国民の、将来に対する不安、不満を納得させるものではないと思う。

 そして、今後、国会では、解散・総選挙もにらんで与野党の長い駆け引きが続く。デフレ脱却、財政再建の道筋、年金・医療・介護の将来への安心に展望を開く本格的な議論・採決には簡単には至らないことが容易に予想される。

 こうした財政、政治情勢は昨年夏以降の米国、欧州各国と重なるように見え、政治の感覚と格付・市場の感覚が何かの拍子にずれ市場に思わぬ波乱が生じることが改めて心配になる。

 これまで、円は海外から相対的に安全な資産と評価され、円高が進み、日本の国債が買われてきた。昨年末に公表された資金循環統計で見ても、海外の国債保有額・増加額はここ数年の動きの中でも相当大きくなっている。

 従来から海外部門の国債は増減を繰り返しており、今後の展開次第では、逆の流れになる可能性もある。過去、逆の動きとなったからといって直ちに市場が混乱したわけではないが、リスク要因のひとつとして考えておく必要はあると思う。

 国会での議論が、こうした市場環境も意識して、我が国の経済・財政の将来展望が早期に開ける方向で進むことを願いたい。

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