わたしの意見-
水野 創

円高修正の原因と評価 

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」3月22日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 2月14日の日銀の金融緩和強化以降、円高修正が定着し、株高も進んでいる。期末から来年度に向けて経営環境と企業マインドの改善が期待される。

 円高修正の原因は、金融緩和以外にも複数考えられ、その強弱をどう見るかで見通しも変わってくる。相場見通しは当たらないものだが、急に逆戻りする要因はないと願いたい。

 1.米国景気回復から米国金利が上昇し、日米の金利差が拡大している(ドル高要因。先行きは米国景気の強さ、FRBの追加緩和策<QE3>次第。これまでどおり振れを伴いながらも徐々に回復度合いが強まろう)。

 2.ギリシャの秩序なき債務不履行の回避、欧州経済への信頼回復(ユーロ高要因。先行きはギリシャの動向次第。世界全体として枠組みを壊さないような知恵が引続き出てくることを期待)。

 3.日本の貿易収支・経常収支の赤字(円安要因。ただし、先行きは円高修正、世界景気持直し、原発再稼働?等により輸出回復、輸入増に歯止めがかかり、イラン要因を考慮しても、赤字が定着することはないだろう)。

 4.日銀のデフレ脱却への強い意志表示。FRBを意識した情報発信を行い始めたことが市場関係者の見る目を変えさせた(長めの金利を低下させ円安要因)。

 5.日銀の1%のインフレ目標と国債購入額の増加を評価。今回の増額により「2012年末までに新規国債発行額のほぼ9割に見合う量を購入することになる」との指摘がある。

 これまで、日銀の政策運営に対する信頼が国債・長期金利市場を支えていた面があることを考えれば、政策運営の変化は、政治・災害等何かの拍子に市場の雰囲気を変える可能性を生む両刃の剣である。

 ビジネスレターで市場の話題を取り上げるとき、指標として、これまで為替、株価、原油を取り上げてきたが、これに加え、長期金利、消費者物価を加えることが必要になったと思う。より広く指標を点検しリスクに備えたい。

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