わたしの意見-
水野 創

足踏みのデフレ脱却  

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」8月16日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 8月10日、消費税増税法案が成立した。消費税は14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げられる。

 しかし、現時点では、14年度初に向けたデフレ脱却は見通せない。

 8月13日に発表された4~6月期GDPの1次速報では、実質GDPが前期比+0.3%と今年度+2%成長を見込める姿となったのに対し、GDPベースの物価指数(GDPデフレータ)は同▲0.5%と前期横ばいの後再びマイナスとなり、名目GDPは同▲0.1%にとどまった。

 物価が、デフレ脱却の目安となる前年比+1%の上昇に向けて現在の横ばい圏内の動きから着実に水準を高めていく姿は、消費者物価指数も含め、7~9月期以降も、以下のとおり考えづらい。

 (1)日銀は国債の買入などによる金融緩和を強化しているが、海外経済の回復の遅れやエコカー補助金終了の影響などから低めの成長が続き、需給バランスの改善も緩やかと見込まれること。

 (2)7月31日に「日本再生戦略」が閣議決定されたが14年度に向けた内容の具体化はこれからで、成長期待もすぐには高まってこないと考えられること。

 最近の民間の経済見通しも13年度末までにデフレ脱却を展望する見通しにはなっていない。

 今後、予想される解散、総選挙の結果次第では、政策のスピードが鈍るだけでなく、政策混乱による為替・長期国債市場でのリスク発生の可能性すら懸念される。

 経営者としては、そうしたリスクも意識しつつ、名目所得の伸びが低い状況での増税、13年末から年度末にかけての増税前の駆け込みとその反動による経済の振れに備えるという難題が追加されたことになる。

●当ウェブサイトに記載されているあらゆる内容の著作権は、株式会社ちばぎん総合研究所及び情報提供者に帰属し、いかなる目的であれ無断での複製、転載、転送、改編、修正、追加など一切の行為を禁じます。