わたしの意見-
水野 創

中国経済の動向について―日米欧金融緩和強化の背景― 

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」9月20日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 19日、日銀は政策決定会合で金融緩和の強化を決定した。

 前回の4月の金融緩和強化から5ヶ月ぶりの政策変更であり、これで9月に入り、欧州、米国、日本の中央銀行が揃って新たな政策対応を行ったこととなる。

 各国中央銀行に政策変更を迫ったここにきての最大の情勢変化は、中国経済の回復の鈍さだったと思う。すなわち、中国経済は2010年に+10.4%の実質GDP成長率を実現した後、2011年には+9.3%に減速した。2012年入り後も、「中国政府の景気対策により早めに回復する」という事前の見通しに反し第1四半期+8.1%、第2四半期+7.6%と低い成長にとどまり、各国の中国に対する輸出の伸び悩みを通じ世界経済回復の制約要因になっている。

 中国経済の先行きについては、二つの見方がある。

 (1)中国国内の格差は大きく、政治的安定を維持するためには当面、これまで通りの高めの成長の継続が必要である。政権交代期に加え権力闘争もあり現時点までの回復は遅れているが、政権交代後には景気刺激策が強化される。

 (2)賃金2桁上昇、不動産バブル発生・崩壊等、中国がこれまでの高度成長を続けていくことが難しい局面になってきている。中国政府は内需中心の安定成長への軟着陸に向けて舵を切っており、これまでのような景気刺激策が実施されることはない。

 最近の尖閣列島の巡るデモなど中国国民の動きなどを見ていると、少なくとも当面は(1)の考え方が妥当に思える。時期は多少遅くなるが、世界経済が回復していくシナリオにもつながると思う。

 この間(2)については、中期的に、我が国のように10%成長から5%成長に移行していくとして、その場合に格差問題がどのように解決されていくのか、政治状況も含めよく見ていくことが必要であろう。

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