わたしの意見-
水野 創

IMF経済見通しの中国 

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」10月11日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 10月9日のIMF総会開会にあわせIMFの世界経済見通しが公表された。世界の成長率は2012年+3.3%、2013年+3.6%と、2010年に5%成長となった後、3年連続で+3%台の成長であり、来年になっても昨年の成長(+3.8%)に達しない姿である。

 このうち、米国、欧州経済については、政治家と市場関係者との価値観や時間軸の違いにより混乱した昨年に比べれば随分落ち着いた動きになっており、「政治の世界は時間がかかる」ということを含め、概ね想定どおりの進行だと思う。気になるのは中国の減速継続であり、輸出入を通じたその世界経済への波及である。

 中国では、リーマンショック後の4兆元の経済対策による大判振る舞いの結果、2010年+10%、2011年+9%の成長は確保したものの不動産価格の高騰も経験した。今回の2012年、2013年見通しは+8%前後と、格差に対する不満を吸収し雇用を確保するための、おそらく許容範囲ぎりぎりの成長となる見通しである。

 今後尖閣問題により日系企業の生産・販売への影響が長引けば一段の減速要因となる可能性もある。

 誕生する中国新政権は、中国内の物価、格差・不満の状況と世界各国との貿易動向を見ながら、今回の見通し以下に落ち込まないようインフラ投資等の経済対策を打つことになろう。しかし、副作用なく成長だけを短期間でうまく実現するような都合の良いコントロールは出来なくなっているのが実態である。これまでのように世界経済を支援する要因として大きな期待はしにくいと思う。そして、政治権力を巡る闘争はぎりぎりまで続くだろう。

 この間日本は、政治のリーダーシップに不満があるとは言っても、とりあえず、2012年は復興需要で成長率は高い上、消費税増税の法改正を実現しており、国民に破綻を防ぐ能力があることで相対的には高い評価が続くのではないかと思われる。

 なお、宿泊旅行統計では、公表されている4-6月分までの回復が顕著だっただけに、尖閣問題の今後が懸念される。

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