わたしの意見-
水野 創

変貌する長期金利

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」4月10日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 4月4日、日本銀行は「異次元の金融緩和(量的・質的金融緩和)」を決定した。以降、円高修正、株高に弾みがつき、長期金利(10年新発債流通利回)は乱高下(特に5日は一日で0.315%から0.620%まで変化)している。

 今回の決定のうち、こうした長期金利の急変に最も影響を与えたのが、長期国債買い入れ対象の拡大である。これまでの平均残存期間3年の国債買い入れから、平均残存期間7年、40年超長期国債まで含む買い入れが始まる。これまでごくわずかしか買い入れられていなかった残存期間10年前後の国債の買い入れも格段に増加することが予想される。

 今後の運用を注視する必要があるが、これまでの、日銀は、「短期金利はコンロトール出来るが、長期金利はコントロール出来ない」との考え方から「長期金利もコントロールできる」との考え方に実質的に変化すると思う。逆に言えば、今後市場が落ち着いても、市場を通じた長期国債の評価がこれまでより分かりにくくなる。

 このことは、心配されている国債暴落、長期金利急騰を防ぐ効果を持つが、反面、状況によっては日銀が果てしない国債買い入れを迫られる可能性も強める。また、債務者である国の財政再建に向けた取り組みの真剣さを損なう可能性もある。

 6月を目途にまとめられる予定の骨太の方針ではそうした懸念を払拭する財政再建策を提示してほしい。また日銀は国債買い入れにあたり、そうした疑念が生じないような運用を祈りたい。

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