わたしの意見-
水野 創

期待から現実に―日銀展望レポートのリスク・バランス・チャート―

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役会長]

(「(株)ちばぎん総研BusinessLetter」5月2日号に掲載)

水野 創[ちばぎん総合研究所取締役社長]

 企業の3月期決算の発表が相次いでいる。業種のばらつきはあるが総じて市場の期待を満たす内容だ。3月末の市況を確認するまで慎重だった企業経営者の皆様から、4月入り後「水野さん、決算は心配ないよ」と頼もしい声を掛けられることも多い。

 輸出額(季節調整済み、前月比)の5ヶ月連続増加、鉱工業生産(同)の4ヶ月連続の上昇など、発表されている経済指標も超円高修正、株高の効果が実際に及び始めていることを感じさせる。

 この調子で行けば今年の賞与も期待でき、「アベノミクスの3本の矢」の期待が現実のものとなる最も順調な経路を辿っているように思う。設備投資等6月短観の結果も楽しみになる。

 こうした状況の下、4月26日に行われた日銀政策決定会合では2015年度までの成長率、物価見通しを含む展望レポートが予定通り決定された。

 レポートの見通しは、2年後の2015年度には消費税引き上げ分を除き2%程度の物価上昇を実現するという、黒田日銀のこれまでの主張に沿った見通しで、今回も民間エコノミストに比べ強気だ。ただ、レポートに掲載されている、消費者物価指数のリスク・バランス・チャートを見ると、中央値は上方修正されているが、大勢見通しは中央値から下方に長く延びており、見通しの分布全体としても下方に厚くなっており、2%達成の厳しさは共有されているチャートだと感じた。

 今後も期待が次々と実現する順調な過程を続けるためには、成長戦略、財政建直しによる強力な後押しで経済の好循環を形成し、2014年度以降の消費税増税の影響を抑える必要がある。次回以降の点検で日銀、民間エコノミストの見通しがどのようにすり寄って行くかは、海外要因を除けばそれらの後押し次第であろう。

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